例えば、50件溜まっているメールをチェックすることが嫌で先延ばしにしているとしたら、次のように分解して、一つひとつクリアしていきましょう。

(1)まずはメーラーを開く
(2)不要なメールを削除する
(3)1件ずつ対処していく

一気にやろうとせずに、手順をなるべく細かく分解し、小さなステップから取り掛かっていけば、漠然と抱えていた怖さや不安も小さくなっていくはずです。

「価値判断」ができないタイプ

ここまでは「問題の明確化」が苦手な方の話をしましたが、先延ばしタイプの方には、「自分がどうしたいかわからない」という方も少なくありません。

これは【か】の「価値判断」の基準があいまいなため、物事を決められないタイプです。

判断する際の価値基準があいまいだと決断もできない(画像:イメージ)
判断する際の価値基準があいまいだと決断もできない(画像:イメージ)

例えば、就職活動の時に自分の希望や好みがわかっていないので、企業ランキングや偏差値といった基準を頼って選ぼうとします。

特に子育てが一段落して再就職をしようとしているママ世代ですと、お金ややりがいだけでなく、子供の幸せといった軸も出てくるから、何を基準にしていいかわからなくなる。漠然と「お金を貯めたい」と言う人もいますが、じゃあお金をどう使いたいかと尋ねると、はっきりした答えが返ってこない。

この、価値判断の基準は誰も教えてくれないので、「好きに選んでいいよ」と言われると困ってしまう人は少なくないのです。

価値判断の基準を養う練習

価値判断の基準を養うというのは、とても壮大な問題です。

このタイプの方は、お昼にカレーかラーメンどちらを食べるかのような日常の小さな自己決定を繰り返し、失敗と成功の経験を積んでいきましょう。

過去を振り返り、自分がどんな選択をしてきたのかを参考にするのもいいでしょう。例えば高校時代は陸上部で個人競技が好きだったなら、自分がマイペースに取り組める仕事がチームプレイよりも向いていそうだ、などと自己分析できます。経験を積んだ大人こそ、過去の自分のデータから得られる情報は多いはずです。

先延ばし癖に悩んでいる人は、このように「もじせか」のどこでつまずいているのかを分析しながら一つずつ解決してみてください。意識して行うことで、先延ばし癖も改善していくでしょう。

なお、決断ができない時は、そもそも「疲れている」「体調が悪い」「睡眠不足」ということも考えられます。そんなときはメールを返す元気すらなくなるのは当然です。ゆっくり休んで元気になってから意思決定を行ってくださいね。

『マンガで挑戦 とっちらかった頭の中を整理して決められる人になる』(主婦の友社)

中島美鈴
臨床心理士。公認心理師。心理学博士(九州大学)。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。

中島美鈴
中島美鈴

1978年福岡生まれ、臨床心理士。公認心理師。心理学博士(九州大学)。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などの勤務を経て、現在は中島心理相談所 所長。他に、九州大学大学院人間環境学府にて学術協力研究員および独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部非常勤研究員を務める。『ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック』(星和書店)、『働く人のための時間管理ワークブック』(共著、星和書店)『脱ダラダラ習慣!1日3分やめるノート』(すばる舎)、『マンガで成功 自分の時間をとりもどす時間管理大全』(主婦の友社)など著書は本書を含めて55冊にのぼる。