1999年11月、愛知・名古屋市のアパートで高羽悟さん(69)の妻・奈美子さん(当時32)が刃物で刺され殺害された未解決事件。

10月31日、26年間の沈黙を破り逮捕されたのは、悟さんの高校時代の同級生・安福久美子容疑者(69)です。

事件発生から26年。
なぜ逮捕までにこれほどの時間がかかったのでしょうか。

これまで安福容疑者はどのような生活を送っていたのか。
現地を取材すると、世間と距離を置いて生活してきた様子が少しずつ見えてきました。

安福久美子容疑者は事件の際、手にケガをしたにも関わらず、医療機関を受診しなかったとみられるなど、息を潜めて生活してきました。

安福容疑者の自宅周辺を取材すると、「夫は見たことがある」との声が聞かれた一方、「一度もお会いしたことないから全然分からない。顔も知らないです」との声もあった。

また妻が近所で民生委員をしているという男性は、「妻も知らなかった」と話し、「一戸建てということになると妻同士付き合いがあるはずだけどね。だけど全くそういう話は知らない」と証言した。

「家族揃った姿を見たことがない」など、本人を見たことがあると答えた近隣住民が極端に少なかった安福容疑者。

町内会や地域のイベントなどには主に夫が参加するなどしていて、近所付き合いはほとんど確認できませんでした。

一方で、安福容疑者と小学校で子ども同士が同級生だったという女性は「子どもが小学生のころは学校行事に普通に来ていて、いい人だったし協力的でした」とも証言している。

10年ほど前に、名古屋市内の現在の住所に引っ越してきたという安福容疑者。

事件現場からはおよそ10キロの場所で、悟さんの現在の自宅から、わずか2キロほど。

事件後も被害者家族のすぐそばで夫と子どもとともに暮らしていたことになります。

イット!は、引っ越した直後の安福容疑者と複数回会ったという人に話を聞くことができました。

その人物は、「安福さんが越して見えた時にご夫婦で挨拶に来てくれました『越してきました』って。洗剤か何かもって」と話し、その時の印象については、「静かな感じの(印象)」と証言しました。

また、花が咲く時期に自宅を通りかかった際に、安福容疑者に「お花綺麗ですね」と声かけると、「母の形見で大事にしたいんです」と話した事もあったという。

形見の花を大事にしていたという安福容疑者。さらに、「ご自由にお花をお持ちください」などと、育てている花を近所に配る様子もあったという。

これまで安福容疑者と何度か言葉を交わしてきただけに、今回の事件はショックが大きかったという事で、「その事件のこと私も知らなくて。あの指名手配の似顔絵を見せてもらって、似顔絵が最初のおかっぱみたいなやつがすごく似ていたから、それで寒気がしてしまって。『あの人がそんなことしたの?』みたいな。具合が悪くなっちゃった」と話した。

安福容疑者と会った時の姿は、警察が公開した似顔絵とよく似ていたということです。

警察は去年、5000人いた捜査対象の中から、数百人を改めて洗い直し、そのうちの一人、安福容疑者の任意聴取を今年8月に開始。

そして先月30日、警察から求められていたDNA型の提出に応じ、その後自ら出頭しました。

元埼玉県警・捜査一課の佐々木成三さんは「殺意が明確であり首を狙っている。何かしらの恨みがあるということに関して被害者の接点が強い人物じゃないかというふうに見立てを持つのは、僕は普通だと思う」としています。

佐々木さんは、安福容疑者が捜査線上には浮上していたものの、ここまで時間がかかったのは、警察の見立てが妻・奈美子さんの周辺に向いていたからだと指摘。その上で、「旦那さんの悟さんとの接点もかなり希薄だったということ。悟さんにとっても今回トラブルじゃなくて若いときの経験という感じ。(警察も)まさかこれが殺人につながるとはまったく思っていなかったと思うんですよ」と話しました。

一方で、安福容疑者が、悟さんが仕事で不在の日を事前に把握していた可能性があることも分かりました。なぜ奈美子さんの殺害に至ったのか。動機の解明が待たれます。


(イット!11月6日放送)

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