近年、未成年による盗撮加害・被害が増えている。

海外における加害行為をした子どもへのサポートが手厚い一方、いまの日本は、特に子どもたちへの支援の拡充が必要だという。

性犯罪の加害者家族の実態に迫る、ソーシャルワーカーの斉藤章佳さんの著書『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)。高校で起きた「男らしさ」をアピールするための盗撮行為の事例と、低年齢化する性犯罪ついて一部抜粋・再編集して紹介する。

低年齢化する盗撮加害

家族会の参加者のなかには、10代後半の性非行少年の親もいます。未成年者の性加害ということもあり、親は「自分の育て方が悪かったのではないか」と強い自責の念に駆られています。

なかでも近年クリニックへの相談が増えているのは、盗撮の事案です。

盗撮というと、成人男性が電車や駅の階段などで女子学生や子どもを盗撮して逮捕された…というニュースを目にすることが多いと思います。しかし、実は未成年者が盗撮の加害者・被害者になるケースが年々増えているのです。

過去にクリニックを受診した盗撮加害者521人にヒアリング調査をしたところ、盗撮行為を始めた平均年齢は21.8歳でした。

これは「四大卒・会社員・妻子あり」が平均像である痴漢加害者と比較してもかなり低い年齢だと思います。子どものスマホ所持率は年々上がっているので、盗撮行為を始める年齢が今後さらに下がることも懸念されます。

盗撮は子どもの悪ふざけ…?

路上での痴漢行為や不同意わいせつ罪など、明確な罪名がつく事案に比べて、盗撮は刑事事件としては比較的「軽い事案」とみなされることが多いため、親も「これは何かの間違いです!」「息子は悪くありません」などと否認する傾向が強く見られます。

また、「子ども同士の悪ふざけでしょう」と加害を矮小化するような発言もしばしば聞かれます。

学校内での盗撮行為は退学や停学処分もあり得る(画像:イメージ)
学校内での盗撮行為は退学や停学処分もあり得る(画像:イメージ)
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生徒による盗撮行為が学校内で発生した場合、学校側は加害した生徒を退学処分や停学処分にして処理するケースもあります。

刑事事件として扱われない場合、本人は「この程度で済んだ」という負の成功体験になることもありますし、親も「うちの息子は悪くない」と開き直ることも多いです。

クリニックにもつながらず、親も家族会に訪れることはありません。こうなると、対象生徒の行動修正は先送りされ、再び同種の加害行為に至ることもあります。