日々さまざまな性犯罪のニュースを目にする。
そこには加害者、被害者、そして被害者の家族もいる。さらに加害者にも親、パートナー、子どもなど家族がいる。
突然、日常が崩壊するのは、加害者の家族も同じ。これまで1000人を超える性犯罪の加害者家族と向き合ってきた、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんの著書『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)では、加害者家族のリアルに迫る一冊だ。
なかでも近年、増加傾向にあるのが未成年による性犯罪。本書で取り上げている、男子高校生が起こした盗撮事件によって崩壊した家族の事例と、デジタルネイティブ世代の意識について、一部抜粋・再編集して紹介する。
サッカー部で成績優秀の生徒が盗撮
体育の授業中、16歳の男子高校生Cがスマホで女子生徒の着替えの様子を盗撮し、それを仲のいい同級生とのLINEグループで共有するという事件が起きた。
両親が問いただすと、Cは当初「みんなでふざけ合っていただけ」と事の重大さを理解していなかった。日頃から真面目で成績も優秀、サッカー部では主力選手として活躍する模範的な生徒だった彼が、なぜこのような加害行為に及んだのか、両親も理解できずにいた。
事態が発覚したのは、被害に遭った女子生徒のひとりが心身の不調を訴え、保健室に駆け込んだことがきっかけだった。

学校が調査を始めたときには、すでに画像は学年全体に拡散され、被害女子生徒は精神的なショックから登校できない状態に追い込まれていた。CがLINEグループに投稿した画像は、さらにSNSを通じて拡散。ネット上の「まとめサイト」にも転載されるようになった。
学校からの一報を受けたCの両親は、まるで悪夢を見ているかのような思いだった。「うちの子に限って…嘘であってほしい」という思いは、警察からの呼び出しで打ち砕かれた。
被害生徒の保護者が被害届を出したことにより、Cは逮捕された。
その後の捜査で、Cは過去半年にわたり、同様の盗撮行為を繰り返していたことが判明。複数の被害者の画像がインターネット上で拡散され、被害は予想を超える規模に膨れ上がっていた。