日曜安全保障は今回で最終回。大荒れの日中関係、中国のレーダー照射の裏側を追う。

アメリカ空母が「遼寧」の進路を“制限”

空母「遼寧(りょうねい)」などが沖縄の海を縦断。艦載機が自衛隊機にレーダーを照射。中国側の強気な姿勢ばかりが見える一連の事態のウラで、中国が拳を突きつけられ、緊張を感じていた可能性が見え隠れしている。

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能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
レーダー照射2日後の8日、日本の南、西太平洋に二つの空母打撃群が展開しています。空母ジョージ・ワシントンは北上して、11日には横須賀に入港したので、結果として遼寧の進路を制限したかもしれません。

アメリカの行動は他にも見られた。南シナ海に浮かぶ海南島は、保有する空母3隻中2隻と大型水上戦闘艦の母港であり、アメリカやヨーロッパを狙える戦略ミサイル原子力潜水艦6隻の基地でもある、中国海軍の重要拠点だ。

注目は、レーダー照射の2日後、西太平洋にアメリカ空母打撃群が展開したその日、イージス巡洋艦ロバートスモールと強襲揚陸艦トリポリが、ベトナムのダナンに入港したことだ。

トリポリは作戦行動半径845キロを誇るF-35Bステルス戦闘機を20機近く搭載する。ロバートスモールは射程1600キロのトマホーク巡航ミサイルを数十発搭載可能だ。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
ポイントは、入港したダナンが、海南島から約500キロの場所だという事です。

艦載機とトマホークで海南島を狙える位置。遼寧艦隊が日本を緊張させた直後、アメリカ軍は中国海軍の拠点に拳を突き付けるかのような行動に出ていたのだ。

こうした動きから4日後、遼寧艦隊は、太平洋から東シナ海に戻った。

空母のパワーアップを誇示か

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
実はアメリカは、こうした事態の前から中国にプレゼンスを見せつけていました。

それは、10月末に来日したトランプ大統領が横須賀で空母を視察したシーン。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
左には、射程1000㎞以上と言われる空対地、または対艦ミサイルらしきもの。そして、右には、弾道ミサイルや巡航ミサイルを狙う迎撃ミサイルを空中発射型にした最大射程350㎞とも言われるAIM-174B空対空ミサイルらしきもの。トランプ大統領は、空母のパワーアップを見せつけ、高市総理とハグをしたのです。

実はこの時の空母が、今回、遼寧艦隊に対し展開したジョージ・ワシントンだった。

今回で最終回となる日曜安全保障。最後の提言は……。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
国際政治は、言葉だけでなく、力を見せつけることによっても動きます。分かりにくくても軍や装備の動きを読み解く…それが安全保障に求められる能力なのです。
(「イット!」12月21日放送より)

イット!
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能勢伸之
能勢伸之

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フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。