ラッコを保護する法律が相次いで制定
「ラッコは高級品といわれる毛皮の取引による乱獲や、タンカーによる原油流出などにより何度か危機に瀕しています」
日本では100年以上前から野生のラッコの捕獲が禁止(オットセイ保存条約)され、水族館に迎える方法は輸入しかなかった。さらに、1975年には絶滅のおそれがある野生動物の取引に関する「ワシントン条約」が発効。
1998年にアメリカが保護法を強化、続いてカナダやロシアも法律でラッコを保護することになり、2003年のロシアからの輸入を最後に日本の水族館は新しいラッコを迎えていない。
2000年に国際自然保護連合(IUCN)が、ラッコを絶滅危惧種に認定。捕獲や取引が厳しく制限された。

しかし、日本でも野生のラッコが見られる場所がある。それは、北海道東部の霧多布岬など。2024年6月時点で50頭ほどいると報告されている。長い間日本から姿を消していたそうだが、近年姿を見せるようになったという。
ただこれだけは注意しておきたい。もし野生のラッコを見ることができても、原則として公表をしてはいけない。観察するときも大声を出したり、もっと近くで見たいとドローンを飛ばしたり、船で近づいたり、食べ物を与えることをしてはいけない。
未来に向けてラッコを含めた海の生きものを守るために、私たちにできることはあるのだろうか。今泉さんは「たくさんある」と言いつつ、まずは「海を汚さないこと」だと話す。
「一番は海にごみを捨てないでください。特にプラスチックごみ。さらに理想の形は陸上の自然保護区のような、海の保護区を作ること。ただ水産業に影響が及びますから、簡単ではないです。ラッコに限らず海全体の生きものを保護する区域ができるのが理想ですね」

今泉忠明
1944年、東京都生まれ。哺乳類動物学者。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。上野動物園の動物解説員、ねこの博物館館長、日本動物科学研究所所長などを歴任。『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)、『パンダ沼への招待状』(世界文化社)など、多くの書籍監修を手がける。