「動物の世界で、ワシがトップに君臨します。“百獣の王”と言われるライオンは、実は2番目の強さ。ワシはライオンの子供をがっしりと足の爪でつかんで持っていきます。ウミワシは主に魚を食べる鳥ですが、ラッコが子供を海面において食べ物をとり海へ潜りに行くときを狙っています」
ちなみに、オスの大人のラッコは体重が40キロ近くもあるため、さすがのウミワシもつかんで飛べない。しかし、子供なら持ち上げられるため狙いやすいそうだ。

「もちろん、お母さんラッコもあお向けで空を見ているので警戒しています。カモメとワシの形が違うことを知っており、子供から離れません。子供は母親のお腹の上に常にいるのですが、空からみると一体化してわかりにくいのです」
一方で海の天敵はシャチだ。ラッコが暮らしている「ジャイアントケルプ」はシャチが苦手とする場所…のようだが、今泉さんは「最近シャチがそこに入ってくると聞いています」と顔を曇らせる。
「『最近、ラッコが減っている』と言われている理由の一つが、シャチがここに入ってきたことだと言われています。コンブが気持ち悪い物ではないと認識したのかもしれません。シャチは体長6~9メートル、ラッコは1メートルほどなので一口です。『おいしい』と味を覚えられたら困ります」
気候変動で海温が上がり、もともと冷たい海で自生するコンブが育ちにくくなったことで、ラッコなど隠れ家としていた生きものたちが隠れられなくなった。一方、シャチも食べ物とする生きものがとれにくくなったことから、ジャイアントケルプに入ってきたのかもしれないと今泉さんは考えている。