遠征に向かっていた北越高校男子ソフトテニス部の部員など21人が死傷したバス事故。どのような経緯で運転手がバスを運転することになったのか…高校側が5月10日夜、2度目の会見を開き、顧問が自らの言葉で経緯を語った。
■顧問が会見に 運転手と挨拶交わすも「変わった様子なかった」
10日、北越高校が開いた2度目の会見には男子ソフトテニス部の顧問・寺尾宏治氏が同席した。
寺尾氏は「私がバスに同乗していれば運転者の異変に気づき、運転を止めさせるなどして事故を防ぐことができたのではないかと思っている」と後悔の念を口にした。
5月6日、早朝の様子を記録した6台の防犯カメラ映像に映るマイクロバス。その車内には北越高校の男子ソフトテニス部員、そして運転する若山哲夫容疑者が乗っていたとみられている。
高校生1人が死亡、20人が負傷した磐越道のバス事故で過失運転致死傷の疑いで逮捕された若山容疑者。
警察の調べに「体調に不安はなかった」と供述していて、出発前に若山容疑者と挨拶を交わしたという寺尾氏も「私が朝、運転手と会った際は特に変わった様子は感じなかった」と話した。
■反対車線にはみ出し走行するバス
新潟市にある北越高校。その周辺の防犯カメラが捉えていたのはレンタカー店から高校へ向かうバスの姿。
まだ交通量が少ない夜明けごろ、若山容疑者が運転しているとみられるバスはなぜかセンターラインを大きくまたぎ、反対車線にはみ出して走行していた。
その後、北越高校へと向かうと高校で20人の部員を乗せたとみられるバスは午前5時半ごろに遠征先へと出発していく。
■「目がバキバキ」違和感覚える生徒も
事故の翌日に開かれた保護者会では「私も聞いた話だが、どうもその運転手さんは子どもたちから見ても、どう見ても様子がおかしいと。先生が会ったときには、それは気づかないものなのでしょうか」との意見も。
これに対し、北越高校の灰野正宏校長は「今のようなことがあったということについては、私も今初めてお聞きしましたので」と答えた。
ただ、若山容疑者を見た生徒の中には様子がおかしいと感じた人もいたと話す保護者も。
「『目がもうバッキバキに決まっていた』と言っていたので、(学校側が)朝見たときにおかしさに気づかなかったのか、そこを悔やむ」
生徒が違和感を覚えながらも、そのまま高速道路に乗り、福島県へ向かった若山容疑者が運転するバス。
警察の聞き取りに複数の生徒が「事故の前にもトンネル内で車体をこすっていた」などと話しているという。
■交通事故鑑定人 “異様さ”指摘
交通事故鑑定人の中島さんは事故現場の痕跡から若山容疑者の運転の異様さを指摘する。
「バスが走ってきて、ガードレールが位置関係としてこのまま行くというのは基本的に考えづらい。(普通は)避けようとする」
バスを貫通したガードレール。中島さんはこうしたケースは見たことがないと言う。
「やっぱり、人間は回避しようとするので、避けようとしたのであれば、ぶつかるときに斜めに当たるので、突き刺さる向きは(斜めに)こうなるか、こうなるか。本当に真ん中、まっすぐなので全く回避動作をしていないと思う」
■事故前日には居酒屋へ
事故の前日、若山容疑者を乗せたというタクシードライバーは「午後5時半くらい、一度飲み屋さんに行っているし、帰りが今度は別なところから8時すぎぐらい。(Q.はしごしているかもしれないということ?)そうですね」と話した。
この日、立ち寄った飲食店の店主は若山容疑者が「あすは朝4時半にレンタカー屋さんで、5時に学校に行く」と聞いていたという。そこで目撃されていたのは、傘を杖のようにして歩く若山容疑者の姿。別のタクシードライバーも「乗り降りが大変なぐらい足が悪い人」と、その姿を見ていた。
■「2カ月で4~5回ぐらい」相次いで事故起こしていた若山容疑者
こうした体調との因果関係は分かっていないが、若山容疑者は4月から相次いで事故を起こしていた。
「この2カ月、4~5回ぐらい事故が頻繁に起きている人」
こう話したのは若山容疑者と15年来の付き合いがあるという自動車修理会社の関係者。この男性によると、若山容疑者が車の修理を依頼してきたのは4月24日ごろ。
「こすった、ぶつけた。まだ走れる状態で、自分で持ってきた」
自分の車を修理に出し、代車を受け取った若山容疑者だが、そのわずか数日後、今度はその代車で事故を起こしたと言う。
近隣住民は「ボンネットがめくりあがったというか、正面衝突でもしたのかなと思われるような車が若山容疑者の自宅近くに停まっていたことがあった」とその車を目撃していた。
若山容疑者はその代車に乗り続けると、5月1日にまたも事故を起こす。前出の自動車修理会社の男性は「私のところから代車として出しておいた車が全損くらいになった」と言い、事故が相次いだため、保険会社からは契約の更新はできないと告げられていたと証言する。
その上で「本人が『免許を返納したいと』。そのほうがいいなと思った。ちょくちょく小さな事故を起こしているような人は、大きいものにつながると思っていたから」と話した。
■レンタカー・運転手の手配めぐり食い違う主張
若山容疑者を知る人が心配する中で現実となってしまった惨事。しかし、一体なぜ若山容疑者がハンドルを握ることになったのか…
バスの手配を依頼された蒲原鉄道の金子賢二営業担当は「学校からの要請で『レンタカーを手配して、なおかつ人も頼むよ』という中で紹介をした。やっぱり予算面だというふうに僕は理解した」と話す。
しかし、学校側はこれを真っ向から否定。10日の会見でも実際に蒲原鉄道とのやり取りを行ったソフトテニス部の顧問も改めて否定した。
金子氏と直接やりとりをしていた寺尾氏は「費用を安く抑えたいから、レンタカーを手配してほしいと依頼したことはない。また、運転手の紹介を依頼したこともない」と、あくまでも蒲原鉄道側には貸し切りバスの運行を依頼したと強調。
ただ、学校側の調査で昨年度、蒲原鉄道に依頼した12回のバスの運行のうち、3回はレンタカーのマイクロバス使っていたことが判明したと言う。
寺尾氏は「3回の請求書を見ると、“レンタカー代”と“人件費”という項目があって、貸し切りバスの場合は“貸し切りバス”としか書かれていなかった」と話し、かかった費用のみを確認していたため、その違いには気づかなかったと主張した。
■事故現場から現金3万3000円が入った封筒見つかる
さらに今回明らかになったのは、蒲原鉄道が人件費を若山容疑者に手渡していたとみられる事実だ。
灰野校長は会見で「事故現場に散乱した部員の持ち物を回収して学校に戻った際、あるカバンの中に人数、行き先を記した蒲原鉄道名のメモ、あるいは蒲原鉄道の担当者から運転手に渡されたと思われる手当ての封筒などであります」と明かした。
若山容疑者のものとみられるカバンに入っていた封筒には『手当』『ガソリン』『高速はカードにて』と記載されていて、中には3万3000円が入っていたと言う。
しかし、蒲原鉄道の金子氏は「ドライバーさんにお金を渡すから来てくれというふうな交渉をしているわけではない。うちのほうで手間代を出しているわけではないので」と、事故後の会見でドライバーへの支払いは否定していた。
ドライバーへの金銭が発生しているならば、違法な旅客輸送行為いわゆる“白バス”にあたるおそれが出てくる。
こうした中、5月11日、蒲原鉄道には再び国交省の職員が立入調査を行った。果たして真相はどこに…究明が待たれる。