「中学卒業までは飲まないで」

子供の脳は未発達なのでカフェインの影響を受けやすい。そのため大人よりも摂取量を控えたほうがいいのですが、特に中学校を卒業するまでは、ブラックコーヒーとエナジードリンクは飲ませない方がいいと思います。イタリアでは、法律があるわけではありませんが、15歳になるまではエスプレッソを飲ませない親が多い、という話を聞きます。

なお、カフェインが入っているお茶やミルクと砂糖入りのコーヒーを家族と一緒に食卓で楽しむぶんには問題ありません。チョコレートやコーヒー牛乳のような子供たちの好きなものにもカフェインは入っていますが、少量なので気にしなくてもいいでしょう。

チョコのカフェインは気にしすぎなくてもOK(画像はイメージ)
チョコのカフェインは気にしすぎなくてもOK(画像はイメージ)

ただ、家庭で親が努力してできることには限界があるのも事実。子供が外でエナジードリンクを買ってきて飲むようになってしまったら困ってしまいますね。そうなってしまったら大人がうるさく言うと隠れて飲むようになるだけなので、「かっこいい飲み物ではないよ」「飲み過ぎたら大変だよ」という懸念は示してあげたほうがいいと思います。

私は、社会全体として「高校生になるまでエナジードリンクはやめよう」という機運を作っていくことが大切だと思っています。

(カフェインの作用と弊害、依存性や1日の摂取量はこちらの記事へ)

『身近な薬物のはなし──タバコ・カフェイン・酒・くすり』(岩波書店)

松本俊彦(まつもと・としひこ)
精神科医。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人を対象に診療を行う。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。著書に『自傷行為の理解と援助』(日本評論社 2009)、『自分を傷つけずにはいられない』(講談社 2015)、『薬物依存症』(ちくま新書 2018)、『誰がために医師はいる』(みすず書房 2021、第70回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『身近な薬物のはなし──タバコ・カフェイン・酒・くすり』(岩波書店 2025)他多数。

松本俊彦
松本俊彦

精神科医。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人を対象に診療を行う。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年佐賀医科大学卒。横浜市立大学医学部附属病院精神科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所司法精神医学研究部、同研究所自殺予防総合対策センターなどを経て、2015年より現職。著書に『自傷行為の理解と援助』(日本評論社 2009)、『自分を傷つけずにはいられない』(講談社 2015)、『もしも「死にたい」と言われたら』(中外医学社 2015)、『薬物依存症』(ちくま新書 2018)、『誰がために医師はいる』(みすず書房 2021、第70回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『身近な薬物のはなし──タバコ・カフェイン・酒・くすり』(岩波書店)他多数。