では、どのようなビタミンに摂り過ぎによるリスクがあるのか。舛森医師は次の3つは特に容量を守るよう注意を促す。
【ビタミンE】
「若返りのビタミン」ともてはやされているビタミンEには、体の中の脂が酸化するのを防ぐ働きがある。それによってコレステロールや血圧が低下し、動脈硬化が予防できると言われているが、摂り過ぎるとどうなるのか。
「サプリでビタミンEを摂り過ぎると、血液がサラサラになり過ぎて出血のリスクが上がります。そのため、脳出血を誘発する危険性があります。
また、現時点では明確な結論は出ていませんが、一部の研究ではビタミンEの過剰摂取が前立腺がんのリスクをわずかに高める可能性が示唆されています。
さらにがんの治療で化学療法を受けている人は、ビタミンEには強い抗酸化作用があるので、せっかく弱り始めたがん細胞を保護し、化学療法の効果を減弱させる可能性があります」

舛森医師によると、そもそも日本で普通に食事をしていればビタミンEが不足することはほとんどないという。ビタミンEは脂に溶ける「脂溶性ビタミン」で、多く摂れば摂るほど体の脂肪に蓄積され、濃度が高くなるので注意が必要だ。
【ビタミンA】
ビタミンAは肌や目に良いとされるため、お肌をケアしたい人や老眼が気になってきた人に人気が高い。
体のバリア機能を高め、視力や免疫システム、生殖能力にも有効で、心臓や肺など各臓器が適切に機能するのを助ける作用もある。機能面では良いことずくめだが、過剰に摂取した場合どういった副作用があるのか。

「発展途上国ではビタミンAが欠乏して失明してしまう子どもがたくさんいますが、日本ではサプリで補う必要がある人はそれ程いません。
ビタミンAを過剰に摂取した場合、頭痛、吐き気、めまいなどの症状が現れることがあります。重篤な場合には、頭蓋内圧亢進や意識障害をきたす可能性も指摘されています。
特に注意が必要なのは『妊婦』です。妊娠中の女性がビタミンAを過剰に摂取すると、胎児に奇形のリスクが生じる可能性が示唆されています。悪阻で食事が摂れない時期などにビタミンAを含むサプリを利用する際は、摂取量に十分注意する必要があります」

【ビタミンC】
疲労回復や傷を治すために分泌されるコラーゲンを作り出すのに必要なビタミンC。
健康な体に欠かせない栄養素で、鉄の吸収を促進するため貧血の人には有効だが、がんを治療中の人は医師への相談が必要だ。
「ビタミンCも抗酸化作用を持ちますが、高濃度ビタミンC点滴ががん治療に有効であるという科学的根拠は現時点では十分ではありません。むしろ、がん治療で化学療法を受けている方は、ビタミンCの大量摂取が治療効果を減弱させる可能性も指摘されています。
自己判断で高濃度ビタミンC点滴などを受けることは避け、必ず事前に主治医に相談してください」