「自分のできることは何かを考えました。すし職人のときは、おすしを通して社会に貢献して喜んでもらえていたのが、一人になりそうした実感が得られなかった中、フィンランドにいる誰かを幸せにできるような仕事をして、それが社会の接点になると気付いた時は希望でした」


「その目標が生まれたきっかけは、移住2年目のときに友人からの『chikaって日本語だとそんなに話すんだ。本当のchikaってどんな人?』という問いでした。移住初期、弱気で言葉もできない自分のことを『赤ちゃんになったみたい』と発した言葉を覚えてくれていて。ただ、まだ本当の私を知らないと思わせていたことに、申し訳なさも感じました。そのときに『できない、できない』と考え続けるのではなく 、『フィンランドでも自分らしく生きていきたい』と思い、その一つがフィンランド語に翻訳した本を出すこと、でした」
「フィンランドでも自分であるため」に本を通して社会とつながりたいと歩み始めたchikaさん。2025年は移住してから4年を迎え、起業から3年が経つ。
chikaさんは、これからどんな未来を描いているのか。
「あえて決めずに、一番心が動くことを選ぼうと思っています。4年間のビザを取得できたことで長期的なことを考えてもいい、と言われた気もしています。目標の“フィンランドでも自分であること”を引き続き、続けながら未来の選択肢を増やしていきたい」
chikaさんのエッセイは、フィンランドという異国の地でのエピソードがベースになっているが、人間関係や仕事に悩んだりする、そうした日常は日本にいる私たちと変わらない。
「夢見ていた場所に来たからといって、夢見ていたことや生き方が自動的にできるわけではないことを学びました。日本にいてもフィンランドにいても、暮らしは自分で作るもの。どこにいても同じように悩み、その悩みを繰り返すことも人間だと認めながら、気づいたその時を最短のスタートラインだと思ってこれからも大事に過ごしていきたいです」

週末北欧部chika
北欧好きをこじらせてしまった元会社員。大阪府出身。フィンランドが好き過ぎて13年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。会社員のかたわらすし職人の修業を行い、2022年4月よりすし職人として移住の夢を叶えたが、職場の倒産により個人事業主に転身。こじらせライフをSNSアカウント『週末北欧部』にて配信中。著書に『北欧こじらせ日記』シリーズ(世界文化社)、『マイフィンランドルーティン100』(ワニブックス)、『かもめニッキ』『世界ともだち部』(講談社)などがある