金銭授受疑惑に揺れる福岡県議会。その中心人物となっている県議会議長が推し進める『ワンヘルス』関連の取り組み。多額の公費が投じられている事業に、いま県民の厳しい視線が注がれている。

蔵内議長が推し進める“ワンヘルス”とは

まだ金銭授受疑惑が表沙汰になる前の6月11日、県議会の高額な海外視察の問題などを受けて記者会見の場に現れた福岡県議会の蔵内勇夫・議長(72・筑後市選出 当選10回)。

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会見では県議会を巡る問題について質問が相次ぐなか、報道陣が問題視したのは、蔵内議長が“ライフワーク”と称するワンヘルス政策についてだった。

海外でのワンヘルス推進活動が県民にもたらす利益について問われた蔵内議長は「感染症というのはパンデミックを起こす。2日で世界中を回ります。福岡県だけで感染症対策をやろうと思っても無意味」と述べた。

ワンヘルスとは、人と動物の健康、そして環境の健全性を“ひとつの健康”として捉え、一体的に守っていこうという考え方だ。

新型コロナをはじめとした人獣共通感染症の対策など世界的に注目されるこの考え方を強力に推進してきたのが、獣医師でもあり世界獣医師会の会長も務める蔵内議長だった。

会見で蔵内議長は「分野別横断的なアプローチがなければ感染症は防げません。医師・獣医師・環境の研究者・経済界・政治、一緒になってはじめて感染症対策ができるものであります」と述べた。

県と議会がともに推進するワンヘルスに関して巨額ともとれる予算規模が物議を醸している。福岡県では、ワンヘルスに関する予算が多く充てられているが、予算を確保するよう働きかけたことはないのか?という記者からの質問には「予算についてはございません」と応じた。

ワンヘルスの名の下に福岡でいったい何が起きているのか?

膨らむ予算 蔵内議長に対して謝礼10万円

「県民の皆さまからの『忖度等々あったのではないか』というような疑念、あるいは不信、こういったことを招くことがないよう適切な事務処理、これを徹底して参ります」

福岡県の服部誠太郎知事(71)は、7月14日の記者会見で昨年度までの5年間に講演会などの謝礼金について不適切な事務処理が合わせて89件あったことを明らかにした。

この不適切な事務処理89件のうち、半数近くの42件がワンヘルスに関する謝礼だったという。

服部知事は「蔵内氏に対して10万円を払っている。なぜ、その額であるのか、きちんとその決定の経緯、考え方が会計書類に残されていなければいけない」と述べた。

県議会議長で福岡県政界の実力者である蔵内勇夫福岡県議会議長。政治家としての顔だけでなく、獣医師という立場から日本人で初めて世界獣医師会会長に就任しワンヘルスの理念を強く推し進めてきた。

蔵内議長は6月11日の記者会見で「ワンヘルスを推進するということは、福岡県議会の大きな政策でございます。私は獣医師であると同時に福岡県議会議員、ワンヘルスを推進するという点において、これを分けることはできません」と述べた。

人と動物の健康、そして環境の健全性を“ひとつの健康”と捉え、一体的に守っていこうという考え方を示すワンヘルス。

これを提唱してきた蔵内議長に講演会の講師として高額な謝礼金が支払われていたことをはじめ、ワンヘルス関連の予算は膨らんできた。

ワンヘルスセンター総事業費は約200億円

福岡・みやま市の保健医療経営大学跡地で整備が進んでいる2027年度開設予定の研究拠点『ワンヘルスセンター』。上空から見ると非常に広い敷地だ。

総事業費は約200億円。老朽化した保健環境研究所を移転し、新たに家畜や野生動物などの保健衛生を担う動物保健衛生所を設けるなどワンヘルスの拠点を目指している。

中核施設として期待される一方で、県内にはかつてワンヘルスの関する施設もつくられていた。4年前の2022年、福岡市の舞鶴公園内にある三の丸広場に整備されていたのが、ワンヘルスの重要発信拠点とされる『ワンヘルスパーク』だった。

2022年11月に福岡市で開催されたアジア獣医師会連合大会にあわせて開園したワンヘルスパーク。馬術体験などを通じてワンヘルスの理念を実践する拠点施設として6千万円かけて整備された。

しかし、馬術体験は平日の実施にとどまり、利用者が限られるなど、結果的に当初の契約期間であった僅か1年で閉園してしまったのだ。

さらに、蔵内議長の地元、筑後市の筑後広域公園入口には、ワンヘルスの理念を象徴するという巨大な螺旋のモニュメントがある。

説明書きには『ワンヘルス・カーボンゲート』と記されている。ワンヘルスの理念とともに、そこには蔵内会長の名前も刻まれてる。

これらの整備に投じられた金額は実に3億円以上にのぼる。

県が公表「認知率は8割近い」 しかし実態は…

ここ5年間でワンヘルス推進の名目で計上されている福岡県の当初予算は、実に100億円以上。

県と県議会が、多額の公費を投じていることに疑問の声が上がり、県議会の代表質問でその妥当性について問われた服部知事は「ワンヘルスと言えば、何でも予算が付くなどという誤解まで生じさせることとなり、深く反省いたしております」(6月12日)と陳謝する事態となった。

多額の税金を投じて推し進めるワンヘルス。県が、355人から回答を得た調査によると、ワンヘルスの認知率は8割近いと公表されているが、県民に聞くとー。

「知らないです。ヘルスって言うから健康のこと?」(20代・男性)。

「聞いたことない。全く分からない」(30代・女性)。

「ワンヘルス?済みません、分からないですね。(県の事業?)聞いたことはありますけど、詳しくは分からない」(40代・女性)。

「知っています。いま、無駄だってニュースになっていますので。人と動物とそれぞれ総合の健康を考えるってやつでしょう?無駄だと思いますよ」(50代・男性)。

『認知率は8割近い』とされるその内訳を見ると「聞いたことはあったが、内容は知らなかった」と回答した人が約45%で「知っている」または「よく知っている」と答えた人は3割ほどにとどまっている。

多額の公費が投じられているワンヘルス関連の取り組み。いま県民の厳しい視線が注がれている。

(テレビ西日本)

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