夏山シーズンに入った北アルプスの白馬岳で、遭難して救助された登山者が再び行動不能となり、1回の登山で「2度遭難」するケースが相次いで発生した。
遭難したのは、単独で入山し救助された東京の68歳の男性と、4人パーティーで救助された外国籍の女性2人で、いずれも疲労しているものの、大きなけがはなかった。
長野県警は「本人の技量や体力からすると準備不足だったと考えられる」としていて、昨夏の県内の遭難者が過去最多を記録する中、登山者に「自分の技量や体力に合った登山をしてほしい」と呼びかけている。
救助されるも…再び救助要請
長野県警山岳遭難救助隊が公式Xに公開した7月2日の白馬大雪渓での救助の画像。男性が下山中に疲労で行動不能となったもので、実はこの男性、6月30日にも山頂を目指して登山中に遭難して救助されていた。
1回の登山で2度救助されたのは、東京都新宿区の68歳の会社役員の男性。
警察によると、男性は6月30日に白馬岳を目指して単独で入山したものの、午後9時過ぎ、山頂近くの山小屋から「宿泊予定の客が到着しない」と警察に通報があった。
地元の山岳遭難防止対策協会の救助隊が白馬大雪渓の上部にある小雪渓の標高2650メートル付近で疲れて動けなくなっていた男性を発見。午後11時前に付近の山小屋まで同行、救助した。
しかし、2日後の7月2日、下山した男性は再び救助されることになった。
午後2時半過ぎ、勤務先の会社の関係者から「6月30日にも遭難して救助してもらったが、本日下山中に転倒して行動できなくなった」と110番通報があった。通報を受け警察の山岳遭難救助隊7人が出動し、大雪渓の標高2250メートル付近にいた男性を発見して背負って下山。午後10時半に麓の救急隊に引き継いだ。
男性は大町市内の病院に搬送され、疲労はあるものの大きなけがはなかったという。
再び…「痛みで下山できない」
7月14日には外国籍の女性2人がヘリコプターで救助された。2人は12日にも登山中に遭難して救助されていた。
救助されたのは、いずれも自称でマレーシア国籍の43歳の女性とシンガポール国籍の39歳の女性の2人。
警察によると、2人は4人パーティで白馬村の猿倉登山口から白馬岳を目指した。
12日午後5時半ごろ、標高約2600メートルの小雪渓付近で、一緒に登っていた女性が「同行者3人が行動できなくなった」と警察に救助を要請。北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して午後8時半に山小屋まで同行、救助した。
しかし、救助された3人のうち2人は山小屋に滞在中に回復せず、自力下山が困難となったため、13日夕方、本人らが「痛みで下山できない」と警察に救助を要請。2人は12日に救助を要請する前に滑落、転倒していて、痛むのをがまんしていたという。警察は14日午前6時前に県警のヘリコプターで2人を救助した。
マレーシア国籍の43歳の女性は顔面など、シンガポール国籍の39歳女性は腰などを負傷したが、軽傷とみられる。
警察「遭難者は準備不足」
1回の登山で2度遭難することになったいずれのケースも、猿倉から白馬岳に1泊2日の予定で入山していた。
長野県は技術や体力に応じた登山をしてもらうため、県内の一般的な登山ルート123について、難易度や必要な体力度を示した「信州 山のグレーディング」を公表している。それによると、猿倉から白馬岳に登るルートは、体力度は10段階のうちの「5」、技術的難易度は5段階評価で3番目の「C」となっている。
このルートはコースタイムで4時間以上の雪渓歩きがあり、滑落や上部からの落石の危険がある一方、真夏でも涼しく、北アルプスを代表する人気のルート。
しかし、長野県警は2度遭難したいずれのケースも、「登山者は最低限の装備は持っていたが、本人の技量や体力からすると準備不足だったと考えられる」として「白馬大雪渓は入門ルートではない」と警鐘を鳴らす。
登山の際は「アイゼンに加えてピッケルやストック、防寒着などは必携。SNSには『難しい行程も1日でアイゼンなしで行けた』といった情報も載っているがうのみにしないで欲しい。コースタイムも参考に各々の体力、技量に合わせ余裕を持った計画を立て、現場で自分には厳しいと思ったら引き返す勇気を持ってほしい」と呼びかけている。
2025年夏の遭難者は過去最多
また、梅雨が明け本格的な夏山シーズンに入る中、長野県警は近年は疲労が原因の遭難が増えているとして、こまめな水分補給や体力に合った登山を呼びかけている。
県警山岳安全対策課によると、2025年7月から9月の夏山シーズンの長野県内の遭難は143件・154人でいずれも過去最多だった。
最近の傾向として、疲れがたまった状態で下山し、転倒したり体調不良になったりして遭難するケースが目立つという。
県警では、下山時は特に足の運びに注意するとともに、熱中症を防ぐための小まめな水分補給や、エネルギー不足による「シャリバテ」を防ぐための行動食の摂取を呼びかけている。

