「友達の次に大切」——小学4年生の瑠那さんはそう話す。今、全国的に大流行している「シール交換」は、かわいくて個性的なシールを集めて交換するアナログのコミュニケーションツールだ。デジタル時代の令和においても子どもたちの間で欠かせない存在となっている。

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大人気の「ボンボンドロップシール」

放課後、友達の家に集まった子どもたち。

「これください」と瑠那さん。「それはいいですよ」と向彩さんが応じる。

いま最も人気のシールは「ボンボンドロップシール」だ。全員が「持っている」と答えるほどの定番アイテム。ぷっくりと立体的で艶のある透明感が特徴で、マシュマロのようなものやおはじきみたいに遊べるシールなど、バリエーションも豊富だ。

お宝発見呉羽店(富山市呉羽町)
お宝発見呉羽店(富山市呉羽町)

このブームは去年からじわじわと広がり、今年本格化。シールを販売する店では交換イベントが開催されるほどで、品切れが相次ぎ、入荷情報を共有するLINEのオープンチャットまで登場している。

「ブームじゃないですか。売り切ればかりで、予約販売もすぐ完売します」と、シール交換イベントを企画するお宝発見呉羽店の土井渓生さんは話す。

遊びの中で育まれる「4つの要素」

富山短期大学幼児教育学科の石動瑞代教授によれば、シール交換には「幼い頃に育みたい人間関係の育ち」につながる要素があるという。教授が挙げたのは、子ども同士の関わりの中で身に付く4つの要素だ。

1つ目が「他者理解」。

「知らない関係でもどんなものが好きかわかるし、仲良くなることができる」と瑠那さん。

石動教授は「自分が大事にしているものを相手がどう思っているか、他者の思いに気づくことができる」と説明する。

2つ目は「調整力」。

「これ頂戴」という5歳の珠凰ちゃんに、「ちょっと、だめ」と小学1年生の希ちゃん。

石動教授は「あげたくないと思った場合には自分で気持ちをコントロールしないといけない」と語る。

3つ目は「交渉力」。

「これください」という瑠那さんに、「無理です」と向彩さん。

瑠那さんは「結構交渉が必要」と笑う。

そして4つ目が「自己回復力(レジリエンス)」だ。

石動教授は「うまくいかなかったりトラブルになることも多々あると思う。経験として気持ちを立て直し、どうしていけばいいか考えることが、レジリエンスの力にもつながる」と指摘する。

親も前向きに捉える「シール交換」

遊びを見守る親も、子どもの成長を実感し前向きに捉えている。

「自分達で話が進んでいく。距離感も近くなり、シール交換から違う遊びに入っていくので嬉しく見守っている」(40代母親)

「シールがなかったら関わらない子でもグループで仲良くなって団結も生まれる」(30代母親)

また、流行語大賞にもノミネートされた「平成女児」という言葉の通り、90年代後半から2000年代前半に小学生だった女性たちが当時を懐かしみながら、子どもたちと一緒に楽しんでいる様子も見られる。

石動教授は、子どもたちだけのシール交換の際にはトラブルも起こるが、「子どもの気持ちを受け止め」「一緒に解決法を考えてほしい」と話す。

再ブームによる親子・友人とのコミュニケーションでより良い成長につながる「シール交換」。アナログならではの「ここのシールが無くなったら空白ができる」感覚が、デジタル時代の子どもたちの「心の成長」につながっている。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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