振り込め詐欺に偽警察官詐欺、さらにはロマンス詐欺…詐欺被害に関するニュースを見ない日がないと言っても過言ではない昨今、公立中学校でサポート詐欺の被害に遭うという耳を疑うような事態が起きた。被害額は1000万円に上るという。
“消えた”1000万円
詐欺の被害に遭ったのは静岡県牧之原市にある市立相良中学校。
事態が発覚したのは5月29日午後3時20分頃、金融機関からの連絡だった。
「学校諸会費の口座から999万9999円の引き落としがあったが本当か?」
偽の警告に騙され遠隔操作可能に
この日、同校では午後1時50分頃、事務を担当する女性職員(60代)が学校のパソコンを使って有給休暇に関する調べ物をしていた。
するとパソコンにMicrosoft社のセキュリティを装う警告画面が表示されたという。
このため、職員が表示された番号に電話をすると、相手先から「パソコンの状態を調べる」と告げられた。
そして、職員は相手先から言われるがままパソコンを操作。
後にわかったことだが、この時、相手先はパソコンに遠隔操作ソフトをインストールさせ、少なくとも午後2時の時点では遠隔操作が可能な状態となっていた。
ただ、この時は詐欺であることに気づいていなかった職員は、相手先から「パソコンが何らかのウイルスに感染している」と言われると、学校が口座を開設している金融機関のネットバンキングについて「正常にログインできるか確認しましょう」と促されるままにログイン。
その後、ネットバンキングにログインしたままの状態で、再び相手先からの指示に従いパソコンを操作すると、画面に大量のデータが表示され、1つずつ消去するよう言われたそうだ。
気づいた時には手遅れ
ここでようやく不審に思った職員は、電話をつないだままにしつつ、別の電話を使ってネットワークシステムの管理業者に相談。
すると、担当者から詐欺が疑われるため、インターネットの配線を抜いた上でパソコンの電源を落とすよう伝えられ職員が実行した。
しかし、時すでに遅し。
不正な送金が行われた後で、金融機関から冒頭の連絡が入った。
市長陳謝 危機意識の欠如が露呈
これを受け、牧之原市と同市の教育委員会は6月1日、市議会の全員協議会で状況を説明。
冒頭、杉本基久雄 市長は「市政を預かる者として、深くお詫びを申し上げます」と陳謝した。
市教委の説明によれば、被害に遭った口座では修学旅行の積立金や教材費、さらには卒業アルバムの製作費など3年生の学年会計を管理していて、999万9999円のほか、100円が不正に送金されたことがわかっている。
実は当該の口座では給食費も管理しているが、給食費は保護者から集金した後、市に納めることになっていて、幸いにして市への送金後だったため難を逃れた。
今回はサポート詐欺の典型だが、騙された女性職員はサポート詐欺が横行していることを「知らなかった」と話しているそうだ。
このため、協議会後、取材に応じた杉本市長は「知らないで許されないと私は思う。あまりにも知識がなさすぎるし、研修や職員教育ができていないのであれば早急に対策を講じる必要がある」と語気を強めた。
血税で損失補填も 問われる管理責任
市教委では情報セキュリティに関する研修をしていたというものの、職員ひとりひとりに強い働きかけをしていたわけではなく、また、不審なメールが届いたり、警告メッセージが表示されたりした場合の対応マニュアルは特になかったという。
市教委は現在、公金総合保険の補償対象に含まれるかについて確認を進めているが、保険で対応できない場合、市は一般会計からの補填も視野に検討を進める考えを明らかにしていて、相良中学校の修学旅行についても予定通り実施する。
しかし、忘れてはならないのは一般会計の主な原資は保護者を含めた市民からの税金であり、1つの不祥事により多くの人に本来は求めなくてもよい負担を課すことなるということだ。
