妻を殺害した罪に問われた元長野県議の丸山大輔被告の裁判員裁判。長野地方裁判所は「被告人が犯人であるという認定に合理的な疑いは残らない」として、懲役19年の実刑判決を言い渡しました。今回の判決について、専門家は「物取りの犯行を否定した点が大きい」と分析している。
妻を殺害したのは私ではありません
元長野県議の丸山大輔被告(50)は、2021年9月に長野県塩尻市の自宅兼酒蔵で、妻・希美さんの首を何らかの方法で圧迫し、殺害した罪に問われている。
10月16日の初公判では、「妻を殺害したのは私ではありません」と起訴内容を否認し、無罪を主張していた。

裁判の争点は、被告が犯人であるかどうかの「犯人性」。犯行を裏付ける直接的な証拠がない中、被告の車が映ったとされる防犯カメラの画像など間接的な証拠をもとに4つのテーマ「被告の所在・移動の状況」「動機」「現場の状況と痕跡」「事件前後の被告の言動」に分けて審理が進められてきた。
検察側は懲役20年を求刑
検察側は「被告が犯人でないと合理的説明がつかず、犯人でないことはあり得ない」などとして懲役20年を求刑。

一方、弁護側は「直接的な証拠はなく、被告が犯人であることを証明できていない」などとして、改めて無罪を主張。
最後に丸山被告は、「私が希美を殺すわけがない」などと話し、裁判は結審した。
「不倫女性との復縁願望」が動機
迎えた12月23日の判決。丸山被告は黒いスーツ姿で入廷し、落ち着いた様子で裁判長を見つめていた。
そして―。
坂田正史裁判長:
「主文、被告人を懲役19年に処する」

長野地裁の坂田正史裁判長は、「被告人が犯人であるという認定に合理的な疑いは残らない」として事実関係を認定。「不倫女性と復縁したいという思いを募らせ、被害者の殺害に及んだもので、その行為は冷酷かつ凶悪な犯行として相当厳しい非難に値する。かなり長期の刑を選択するよりほかない」などとして懲役19年の実刑判決を言い渡した。
丸山被告は、弁護人の隣に座り、しきりに汗をぬぐいながら判決理由を聞いていた。
裁判所はどういう点を認定?
懲役19年の有罪判決。裁判所はどういう点を認定したのか。
裁判は、間接的な証拠をもとに4つのテーマに分けて進められてきた。
一つ目の「被告の所在・移動の状況」では、防犯カメラに映っていた不審車両について、被告人の車とする検察側の解析結果の一部を「信用できる」とした。

二つ目の「動機」では、「不倫相手と復縁交際したいという思いを相当強くしていた被告が、妻の殺害という行為を次第に思案し、場当たり的にそのような考えを思い立ってもおかしくなかった」とした。
三つ目の「現場の状況と痕跡」では、金庫以外に物色の痕跡がないこと、被害者に逃走・抵抗の跡がないことなどから「物取り犯の犯行に見せかけて、被害者と相当近い人物の犯行である」とした。

四つ目の「事件前後の被告の言動」では、パソコンにUSBを差したまま7時間半にわたって操作しなかったことを「議員会館にいたとする意図的な工作であった蓋然性が高い」とした。
いずれも検察側の主張を認めた形だ。
物取りの犯行を否定した点が大きい
今回の判決について刑事訴訟法に詳しい信州大学経法学部の丸橋昌太郎教授は「本件は非常に多角的な事実関係、犯行の動機、防犯カメラの映像、犯行現場の状況から、多角的に検討して、犯人でなければ説明できないことを認定しているので、ものすごい情報量をしっかり検討して、判断した判決ということになります」と話し、『物取りの犯行を否定した点が大きい』と分析している。

一方、弁護側は裁判後に行われた会見で、「様々な点で疑問が残る判決」として年内に控訴を申し立てる意向を示した。
丸山被告は「意外な判決でショックを受けている」と弁護団に語ったという。
(長野放送)