長野県塩尻市で2021年9月、妻・希美さん(当時47)を殺害した罪に問われていた元長野県議の丸山大輔被告(50)に対し長野地方裁判所は23日、「被告人が犯人であるという認定に合理的な疑いは残らない」として懲役19年(求刑20年)の実刑判決を言い渡した。裁判では直接的な証拠が無い中、防犯カメラの画像など間接的な証拠をもとに審理が進められ、裁判所は検察側の主張をほぼ認める形となった。丸山被告は公判で一貫して無罪を主張しており、弁護団は判決を受けて「様々な点で疑問が残る」として年内にも控訴する方針を示している。
「合理的な疑いは残らない」
12月23日の判決公判。
丸山被告は黒いスーツ姿で入廷し、落ち着いた様子で裁判長を見つめていた。
長野地裁の坂田正史裁判長は、「複数の状況証拠から被告人が犯人であるという認定に合理的な疑いは残らない」として事実関係を認定。

「不倫女性と復縁したいという思いを募らせ、被害者の殺害に及んだもので、その行為は冷酷かつ凶悪な犯行として相当厳しい非難に値する。かなり長期の刑を選択するよりほかない」などとして懲役19年の実刑判決を言い渡した。
間接証拠をもとに…
懲役19年の有罪判決。裁判所はどう具体的に判断したのか。
裁判は、間接的な証拠をもとに4つのテーマに分けて進められてきた。

テーマ1「被告の所在・移動の状況」では、長野市の議員会館と塩尻市の事件現場の間の6カ所の防犯カメラに映っていた不審車両についての判断がポイントとなった。いずれの画像にもナンバーは明瞭に映っていなかったものの、特徴から被告人の車だとする検察側の解析結果を「信用できる」とし、「類似する車両が(想定される)移動状況と符合する方向に走行していたことになる。同一車両とは断定できないものの、相当な偶然が重ならなければ生じない事態」で「被告が両地点を往復したというのは純然たる仮説にとどまらない」とした。

テーマ2「動機」については、「不倫相手と復縁交際したいという思いを相当強くしていた被告が、妻の殺害という行為を次第に思案し、場当たり的にそのような考えを思い立ってもおかしくなかった」と認定。

テーマ3「現場の状況と痕跡」では、金庫以外に物色した痕跡が無いことなどから「物取り犯の犯行に見せかけた被害者と相当近い人物の犯行である」とした。

テーマ4「事件前後の被告の言動」では、パソコンの操作状況について「USBメモリーを差しながら原稿ファイルを起動しておらず、(犯行時刻に)議員会館にいたとする意図的な工作であった蓋然性が高い」と判断した。
いずれも検察側の主張をほぼ認めた形となった。
物取りの犯行を否定した点が大きい
信州大学経法学部の丸橋昌太郎教授は、今回の判決について「物取りの犯行を否定した点が大きい」と分析。

「本件は非常に多角的な事実関係、犯行の動機、防犯カメラの映像、犯行現場の状況から、多角的に検討して、犯人でなければ説明できないことを認定しておりますので、ものすごい情報量をしっかり検討されて、判断した判決ということになります」と述べた。
弁護団「様々な点で疑問が残る判決」
長野地検の次席検事は「間接証拠が適切に総合評価され、検察官の主張が受け入れられたものと理解しており、長期間の審理に携わった裁判員の皆様に敬意を表する」とコメントとした。
一方、弁護団は判決後の記者会見で「様々な点で疑問が残る判決」として年内にも控訴する方針を示した。

征矢芳友主任弁護人は「弁護団としても、丸山さん本人としても無罪を確信していただけに、驚くべき判決に衝撃を受けた」と述べ、「当然、控訴ということで、年内には控訴を申し立てる所存であります」と語った。
被告「意外な判決でショック」
丸山被告は判決を聞きながら、弁護人の隣に座り、しきりに汗をぬぐう様子が見られた。弁護団によると、被告は「意外な判決でショックを受けている」と話したという。
裁判員「証拠だけで判断」
裁判後、裁判員を務めた6人は取材に応じ、「メディアなどの内容は頭に入れず、裁判の内容で判断するよう、難しくはあったが気を付けてやるように心がけた」と振り返った。

また、「他の事件に関しては、あまり頭の中にインプットしないようにしていた。そちらの判断に左右されることがないように、こちらの証拠だけで判断してきた」と無罪判決の出た和歌山の資産家が死亡した事件などにも触れて語った。
(長野放送)