熊本・嘉島町に工場を置くサントリーが、子どもたちに向けて『水育』(みずいく)という活動を続けている。20年前に熊本からスタートした、水や森の大切さを学び、未来につなぐ活動に密着した。
水育スタート20年 地下水を未来へつなぐ
2024年7月に熊本・嘉島町にあるサントリー九州熊本工場に集まったのは、熊本や福岡からやって来た小学生やその家族約30人。バスに乗って向かうのは、阿蘇の南外輪山にある『天然水の森 阿蘇』だ。
この記事の画像(16枚)水育の講師は「阿蘇に降った雨がずっと地下深い所にしみ込んで、阿蘇に降った水の恵みを受けられる所にサントリーの工場があるんだよ。たくさん降った阿蘇の水がどうなるか森を探検してみよう」と話した。
2003年に九州熊本工場が誕生し、翌年からサントリーは小学生を対象とした『水育』を行っている。『水育』とは子どもたちに、体験を通して水や水を育む森の大切さに気付いてもらい、未来につなぐ取り組みだ。
子どもたちは森を歩き、森に育つブナやミズナラなどの木の種類や、その木の実を食べて生きる動物について学ぶ。
講師が「ここ、めっちゃフカフカって場所があったら教えて」と声をかけると、参加者たちは足元を確かめ「ここフカフカ」「ここもフカフカ」と知らせていた。
木の成長に応じて一部を伐採する『間伐』など、手入れされた森では地面に日が差すことで草が育ち、ミミズなどの虫や微生物が『フカフカな土』を作ってくれる。
『水育』では、多様な植物や生き物によって育てられた、この『フカフカな土』が水を地下に蓄える、いわゆる地下水涵養に大きくつながることを学ぶ。
雨が地下にしみ込み飲料となるまで20年
講師が「森に降った雨がずっと地下にしみ込んでいって、工場でくみ上げられてボトルに詰められるまでに、かなり長い時間がかかるけど、どれくらいかかると思う?」と聞くと、子供たちは「10年」「15年」「13年」と答えた。
実は、阿蘇に降った雨が地下水となって、嘉島町の工場でくみ上げられ、飲料として手元に届くまでには約20年かかる。
それを知った子どもたちは、「(水が)おいしいです。すごいなと思いました。もしかしたら、今飲んでる水も昔(降った雨)の水ってことになる」や「(水が)下にある地下水からできてることを初めて知りました。(20年かかることに)めっちゃ驚きました。これからは大切に飲みたいと思います」と、水の大切さに気付いたようだった。
水育20周年で20年前の小学生が参加
この『水育』、熊本の『天然水の森』からスタート。2024年で20周年を迎え、今では国内だけでなくベトナムやタイ、フランスなど海外でも『Mizuiku』として広まっている。そして、サントリーはことし初めて大人向けの『水育』を開いた。
サントリーホールディングスの天然水の森グループ・円谷崇浩課長は「(水育)20周年ということで、20年前に小学生だった人が大人になって、環境保全の大切さを自分事のように感じてもらい、水のサステナビリティーの重要さを一緒に学んでいただこうと」と目的を話した。
8月12日に熊本で開かれた大人の『水育』には県内外から29人が参加し、山口からの参加者は「土や微生物など全てのものが山一帯となって、きれいな水を作っていることに感動した。改めて自然を残すためにできることをやっていきたい」と話した。
また、福岡からの参加者は「20年前、小学校6年生のときに(水育に)参加しました」と話し、「水の大切さを息子たちに引き継いでいけたら」と、20年続く『水育』の意義が感じられた。
使う量の2倍の量を地下水へ 企業の使命
大人の『水育』で、地下水とそれを育む森の大切さを学んだ参加者たちだが、サントリーでは16都府県の26カ所で『天然水の森』を整備していて、その面積は約1.2万ヘクタールに上る。
円谷課長は「(約1.2万ヘクタールは)山手線の内側の2倍の土地。そこで水を涵養することで国内の工場で使う水の2倍を戻している。これは企業としての使命でやっている」と述べた。
サントリーによると、森づくりなどを通した地下水涵養の取り組みで、国内の工場で年間に使う水の量の約2倍の量の水を地下水として還元しているということだ。
『水と生きる』、自然や水の恵みと一緒に生きる企業として、貴重な水資源を守るサントリー。
大切な水を次の20年後の未来に届けるためにも、水を育む森の大切さを知り、守っていくことが重要のようだ。
(テレビ熊本)