熊本市北区の製薬会社KMバイオロジクスの地下水保全に向けた取り組み「ウオーターオフセット米」について取材した。米を買うことで地下水涵養(かんよう)に一役買うというものだ。

地下水育む「ウオーターオフセット米」

熊本市北区にある製薬会社KMバイオロジクスに到着した1台の車。
ハッチバックには大量の米袋が乗っていた。

車に乗った大量の米袋
車に乗った大量の米袋
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KMバイオロジクスのエントランスには、車数台分総量1944キロの米袋が並べられ、その米袋には「地下水を育む米」と書かれている。

「使う分以上の水を熊本の地下に返したい」
「使う分以上の水を熊本の地下に返したい」

KMバイオロジクス・重浦美鈴さん:
使う分以上の水を熊本の地下に返したいという思いが強く、「ウオーターオフセット米」の活動に参画している

インフルエンザをはじめとしたワクチンなどの医薬品製造に欠かせない水。

KMバイオロジクスでは、工場での節水はもちろん、水を地下に蓄える地下水涵養にも取り組んでいる。

「使うからには保全するのは責任」

2023年10月、菊陽町にある田んぼでは黄金色に実った米が収穫されていた。稲は実るまでの間、田んぼに水を張って育てる。

その水はゆっくりと地下にしみ込み地下水になることから、水田は「地下に水を蓄える地下水涵養に適している」といわれている。

水田は地下水涵養に適しているといわれる
水田は地下水涵養に適しているといわれる

特に白川中流域の大津町や菊陽町にある水田は「ざる田」と呼ばれ、他の地域の水田よりも地下への浸透率が高く、熊本の地下水が豊富であることの理由の一つになっている。

そういった、地下水涵養に効果的な地域の米を積極的に食べることで、農家を手助けし、地下水保全につなげるのが「ウオーターオフセット米」だ。

地下水保全につなげる「ウォーターオフセット米」
地下水保全につなげる「ウォーターオフセット米」

KMバイオロジクスの重浦美鈴さんは「ウオーターオフセット米」について「2018年から始め、くまもと地下水財団と一緒に取り組んでいるが、初めは少なかったが、年々購入者が多くなっている」と話す。

KMバイオロジクスは、これまでの湛水事業に加えて2018年から「ウオーターオフセット米」にも参加し、この日は仕事終わりに多くの社員が購入した米の受け取りに来ていた。

従業員「使うからには保全するのは責任」
従業員「使うからには保全するのは責任」

従業員:
水は大事な原料の一つ。地下水を使っているし、使うからには涵養して保全するのは社会的な責任だと思うので積極的にやっていきたい

購入した従業員からは味も好評で、「おいしい米で食卓を囲み、家族で地下水について話すきっかけにもなる」との声が聞かれた。地下水保全への意識は、会社をきっかけに家庭にも広がっているようだ。

使った以上の水を地下水に涵養

KMバイオロジクスの重浦美鈴さんは、今後の取り組みについて「田植えや稲刈りに従業員に参加し、関心を持ってもらい、地下水や環境の取り組みを活性化させていきたい」と話す。

使用料以上の水を地下水に
使用料以上の水を地下水に

KMバイオロジクスは2022年度、約70万トンの取水量に対して、90万トンの水を涵養。
使った以上の水を地下水として戻している。

使う量と蓄える量のバランスが重要視される中、熊本の宝を守る取り組みが進んでいる。

(テレビ熊本)

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