みんなのスケート。誰もとり残さないリンクとは。

銀盤の上、鮮やかな軌跡を描くフィギュアスケーターが繰り広げられる技を目の前で楽しんだあと、走るでも歩くでもなく氷の上を車椅子で滑る人たちがいました。

この体験を特別なものにするのではなく、誰もが一緒に楽しめるスケートの新たなかたちとは。

オリンピックの興奮冷めやらぬ中、2月に兵庫・神戸市で、誰でも参加できるスケートイベント「チェアスケート イン 神戸」が開かれました。

リンクを貸し切り、一般営業中ではそのまま入ることが難しい車椅子やストレッチャーの人を中心に、約100人が参加しました。

車椅子で思い思いに滑ったり、アトラクションさながらの動きに大人も子供も大興奮する様子を見せました。

ここでは「やってみたい」という思いが、「やれた」「楽しい」という体験に変わります。

車椅子やストレッチャーが、それを押すスケート初心者の補助器具に早変わり。
普段介助する人が“される側”になることも。

参加者は「こんなに広々と安心して滑ることがないので、すごく楽しい」「こうやって一緒に楽しめるのが、すごくうれしい」「親が一緒に楽しめるのはなかなかないんで」と話します。

なかには、全盲の女の子の姿もありました。

全盲の女の子の母:
スケートは全盲の子はできないものだと思い込んでたが、「やりたい?」と聞いたら「やりたい」と言っていたので。思ったよりできることは多いんだなと改めてやってみて思いました。

全盲の女の子:
(Q.どうでしたか?)楽しかった。また来たいなと思った。

イベントを主催するのは、フィギュアスケートの試合を観戦するのが趣味だというチェアスケート協会代表の小池幸子さん。

きっかけは、観戦仲間たちが趣味でスケートを習い始めるようになったことでした。

チェアスケート協会代表・小池幸子さん:
一緒に観戦していた仲間たちが今度は自分で滑るようになって、私もすごくスケートをやりたいと思ったのがきっかけです。ただ足が悪くて車椅子なので、その状態でも何かできないかと自分のためにやり始めたが、一緒にやって、せっかくだから色んな人に参加してもらおうと思って。

そこで小池さんが声をかけたのが、全日本フィギュアスケート選手権に出場した元選手で、現在は福岡の病院で理学療法士として働く早川晃太郎さん。

ちょうど競技から引退しようとしていた時期にこの誘いを受け、スケートに再び関わることになりました。

福岡山王病院リハビリテーション科 理学療法士・早川晃太郎さん:
まさか車椅子でスケートができるとは想像もしていなかった。車椅子のユーザーの方、子供たちの笑顔が滑っているときに見られるのが、自分のスケートが楽しいという気持ちと同じ気持ちなのかなと。

これまで、北は北海道から南は福岡まで、全国各地でこうしたイベントを開催してきた小池さんと早川さん。

4月にNPOを立ち上げ、事業として本格始動するとともに、新たな試みも始めています。

イベントの開始直前、小池さんと早川さんが練習している様子がみられました。

実はこの2人、2025年末に行われたインイブクルーシブスケートのバーチャル世界大会に日本で初めて出場。
2人で息のあったプログラムを披露し、見事優勝。ゆくゆくは競技にしたいと語ります。

チェアスケート協会代表・小池幸子さん:
なんでフィギュアスケートはパラリンピックの種目にないんだろうとスケートファンとしてはずっと思っていたが、私たちが出たことがきっかけで、僕も出てみたい、私も出てみたいという車椅子ユーザー、障害がある人がいれば、それが広がっていくと競技になる。

福岡山王病院・早川さん:
車椅子の方と一緒に振り付けをする。2人で一緒に表現をするというのは、すごく斬新な新しいこと。パラスポーツの競技として広めていきたい。