熊本県内だけでなく、全国でもここだけではないかという、“線路の下”にある南阿蘇村の水源「寺坂水源」。環境省の平成の名水百選にも選ばれた「南阿蘇湧水群」を構成する水源の一つで、水源と地域の結びつきを取材した。

7月に全線開通した南阿蘇鉄道

熊本県内に1,000カ所あるといわれる水源。テレビ熊本では、海の底や小学校の校庭、民家の庭先など珍しい場所にある水源を紹介してきたが、今回は「線路の下から水が湧く」と聞き、訪ねた。

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その線路というのが、2023年7月に全線開通した南阿蘇鉄道だ。立野駅で列車に乗り込むと、夏休みということもあって、車内は鉄道の旅を楽しむ人たちで混雑していた。

景色を見ながらゆられること約15分、降り立ったのは、全国で最も長い駅名と言われていた駅「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」だ。

“水の生まれる里” 水がもたらす恩恵

ここで案内役の寺坂水源保存会の渡邉吉保さんと合流した。

渡邉さんによると、“水の生まれる里”という駅名なだけに、このあたりには水源は多く、民家の裏にも小さい水源があるという。

郡司琢哉アナウンサー:
ジャバジャバと右も左からも音が聞こえてきますけれど、水の通り道になっているんですね

寺坂水源保存会・渡邉吉保さん:
水路がずっと通ってますからね。恩恵をみんな受けてますね。田んぼは

郡司琢哉アナウンサー:
じゃあ、やっぱり駅名の通り水の生まれる里なんですね

「寺坂水源」という名前はこの正教寺の前が坂になっていることから
「寺坂水源」という名前はこの正教寺の前が坂になっていることから

地区には、加藤清正の時代に建てられた正教寺というお寺があり、その寺の前が坂になっていることから「寺坂」と呼ばれるようになったそうだ。

そして、駅から5分ほど歩くと、南阿蘇鉄道の線路が見えてきた。

南阿蘇鉄道の高架橋 この真下に“水源”が
南阿蘇鉄道の高架橋 この真下に“水源”が

寺坂水源保存会・渡邉吉保さん:
この高架橋の下が水源になっております

郡司琢哉アナウンサー:
本当に真下なんですね。あ、湧いてる湧いてる、ボコボコ湧いてる

「線路の下」にある寺坂水源

寺坂水源は環境省の平成の名水百選にも選ばれた「南阿蘇湧水群」を構成する水源の一つで、毎分5トンの湧水量を誇る。

郡司琢哉アナウンサー:
(飲んでみると)まず冷たいですね。あと柔らかい水ですね、飲みやすい。スーッと入っていくような水ですね。これでコーヒー入れたりお茶入れたり

渡邉さんはお湯で割っていただくそう
渡邉さんはお湯で割っていただくそう

寺坂水源保存会・渡邉吉保さん:
私はお湯割りなんですけど

郡司琢哉アナウンサー:
お湯割り!いいなあ

福岡の北九州から来たという観光客にここに来た理由を聞くと、「水源とトロッコ列車がここで撮れる。両方とも楽しめるのでここに来た」と話してくれた。

そして、水源の近くにある「芋車」が置かれていた。「芋車」は、阿蘇地方に多い用水路で使う芋の皮むき用の水車だ。地域の人たちが交代交代で自由に使えるよう常設してあるんだという。

所定の位置に設置すると水の力で芋車が回る仕組み
所定の位置に設置すると水の力で芋車が回る仕組み

使い方は、水路にせき板を立てて水の流れを変え、芋車に里芋を入れ、所定の位置に設置するだけ。あとは待つこと、約20分。

皮が向けた里芋のできあがり
皮が向けた里芋のできあがり

水の力だけで面倒な皮むきを代行してくれる。何とも便利な水車だが、それもこれも、きれいな水があればこそだ。

渡邉さん「私たちの命の次に大切なもの」

8月6日、地域の人たちが集まっての清掃活動が行われた。

寺坂水源保存会・渡邉吉保さん:
毎月第1日曜日に全員集まって環境維持を込めて清掃活動をやっております。おじいちゃん、おばあちゃんの時代からやっておられますから、半世紀以上は続いているということですので、ぜひ私たちもこれを続けていきたいと思っております。この地域になくてはならないもの。そして私たちの命の次に大事なもの。この水源のおかげで私たちはここで生活ができると思っていますので、今後も大事にしながら将来につなげていきたいと思っています

「この水源のおかげで私たちはここで生活ができる」と話す渡邉さん
「この水源のおかげで私たちはここで生活ができる」と話す渡邉さん

古から湧き出す水の上に、鉄軌道が架けられて100年近く。

南郷谷の片隅でボコボコと湧き出す水の上を、列車がガタンゴトンと走る光景がまた戻ってきた。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
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