なぜ内閣支持率が下がらない?
先週末行ったFNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞の世論調査によると、岸田内閣の支持率は23%で前月比1ポイント上昇、一方の自民党支持率は24%で1ポイントダウンだった。なぜ支持率は下がらなかったのか?
この記事の画像(8枚)同時期に調査を行った他社(朝日、毎日、NHK)もほぼ同じで、自民党支持率は少し下がっているが、内閣支持率はわずかだが持ち直している、という傾向だ(共同通信だけ内閣支持率が5ポイント下落)。
また自民の支持率が下がった分、立憲民主党や日本維新の会など野党の支持率が上がったわけではなく、「支持政党なし」に回っているようだ。
今月に入って国会では衆参で政治倫理審査会が開かれたが、各社の調査で「説明責任を果たしていない」「説明が十分でない」という回答が9割に上っており、国民は全く納得していない。
だから内閣支持率はまた下がるのかと思っていたのだが、意外に下がらなかった。もしかしたら国民は自民党はキライだが、岸田文雄首相のことはそんなにキライではないのかもしれない。
確かに安倍派の幹部らが政倫審の公開での開催に慎重だったとされたのに対し、岸田氏が電光石火、「オレも出る」と宣言し、公開開催にこぎつけたのは見事だった。またその後、予算の衆院通過を強行し、年度内の自然成立を決めたのも筆者は「うまいな」と感心した。
「眠れる森の美女」のような気分
株価は史上最高値を更新し、「夢」の4万円台に突入した。春闘は「満額回答」だけでなく組合の「要求越え」の企業も現れて、連合の集計では賃上げ率が33年ぶりに5%を超えた。そして日銀はマイナス金利を解除した。
50歳より若い人たちは経験していないからわからないかもしれないが、それより上の私たちの世代にとっては30年ぶりに経済が復活しつつある、という何だか長い眠りから目覚めた「眠れる森の美女」のごとき気分なのだ。
その「気分」の良さも、政倫審への不満がありながら内閣支持率を下げ止まらせている要因なのかもしれない。
先日、地方の中小企業の経営者の方と話したら、「材料費高騰で賃上げの余裕はないが、これだけ大手が上げるのなら我々も上げないと人が集まらない」と仰っていた。賃上げが中小にも広がり、実質賃金がプラスになれば国民の「気分」もさらに良くなるだろう。
では岸田首相は今、何をすべきなのか。
解散などしている場合ではない
予算の自然成立を決めたことで、岸田氏は早期解散権を握ったので、6月、早ければ4月にも解散して衆議院選挙に臨むのではないかとの観測がある。
秋の自民党総裁選で再選されるためにはその前に解散総選挙をやって勝つことが前提というのが永田町では常識だ。
だが4/28に予定されている衆院の3補選は、長崎、東京ではいまだに候補者が立てられず、唯一立てている島根でも情勢調査で苦戦が伝えられている。
与党を組む公明党の幹部は「調査で与野党が拮抗しているから、選挙は今やらない方がいい」と言っていた。だから解散はできないと思う。
ただ「自民はキライだが岸田はキライではない」という人がいるのも事実だ。つまり今選挙をしたら投票するかどうかはわからんが、政権運営は続けてもいいよ、という事だ。
ということは岸田氏は解散などせず、とりあえず総裁選までのあと半年、日本経済を元気にするためにひたすら働くしかない。
ポスト岸田は「帯に短し、たすきに長し」で、本命がなかなか決まらない。その理由は岸田氏がまだレームダック(死に体)にならないからだ。逆に岸田氏が力尽ければ、自然に次が決まる。
つまり岸田氏は解散しなくても、「戦闘姿勢」を崩さなければ総裁再選も含め、衆院任期切れまでのあと1年半、政権を継続できるのではないか。
(執筆:フジテレビ報道局上席解説委員 平井文夫)