岸田氏は今週もブルー
先週、サザエさん症候群(月曜に会社や学校に行くのが嫌で日曜夜に落ち込むこと)について書いたが、今週も岸田文雄首相にとっては辛い月曜となったであろう。読売新聞の支持率が初めて20%台となり、朝日、毎日も続落したからだ。
しかも火曜からは国会の予算委員会が始まり、支持率低下の一番の原因である所得税減税のほか、政務3役の不祥事、大阪万博の経費問題など、野党にボコボコにされ、ほぼサンドバッグ状態だった。今週末調査をやったら来週も支持率は必ず下がる。
この記事の画像(5枚)おそらく今、テレビ局や新聞社から電話がかかってきて「岸田内閣を支持しますか」と問われた時、よほど熱心な自民党員でない限り、「はい、支持します」とは言いにくいと思う。
つまり世間は岸田首相を支持したり、ほめたりするのが、はばかられる雰囲気になっている。私も岸田政権を評価する記事を書くと読者の皆様からものすごくお叱りを受ける。
しかし冷静に考えてみて、岸田さんというのはそんなにひどい首相なのだろうか。就任して2年がたつが実は実績は色々挙げているのだ。だから天邪鬼な私は叱られる覚悟で岸田政権の実績を挙げてみることにする。
岸田政権の実績を挙げてみよう
直近では原発処理水の放出を断行した。決めたのは菅義偉前首相だが、やはり実行に移す方が大変だ。案の定一部の野党やメディアは大騒ぎしたし、中国は海産物の禁輸に踏み込んだ。
だが先日のサンフランシスコでの日中首脳会談での習近平主席の言い方は「適切に処理すべきだ」という表現で、中国が国内にいろいろ問題を抱えていることを差し引いても、ずいぶんおとなしかった。
処理水問題では中国は国際社会では明らかに孤立しており、もうほぼ「終わった」話だと思う。多くの国を味方につけた日本の外交的勝利だが、特に韓国の対応が大きかった。韓国野党は「処理水けしからん」と騒いだので、中国としては是非韓国に「あちら側」に来てほしかっただろうが、尹錫悦大統領はブレずに、日本側についた。
その対韓関係の改善も大きな実績だ。日韓のトラブルは慰安婦、徴用工で長期的に厳しい状況だが、尹政権が頑張ってここまで戻してきた。日本も余計なことをせず、輸出手続きのホワイト国再指定など最低限の妥協にとどめて、うまく軟着陸した。
他にも外交では、危険を冒してあえて行ったウクライナ訪問、バイデン米大統領らを原爆資料館に招いた広島サミット、安全保障では反撃能力保有の容認、エネルギーでは原発への積極的な関与など、多くの実績がある。
防衛増税に批判が多いが、防衛力強化に税金を払うのは当たり前で、しかも所得税は今の50歳以上の人にはほとんど関係ない。事実上、若者や子孫に「つけ」を回すのに「増税許すまじ」と叫ぶのは身勝手を通り越してピンボケだ。
不人気の理由は発信力ではなく国民の気分?
もちろん文句を言いたいこともある。LGBT法の拙速な成立は、バイデン氏の原爆資料館訪問のバーターだったのかもしれないが、維新と国民の案を丸呑みするという極めてみっともないやり方で保守派の離反を呼び、今の支持率低下の遠因となっている。
また「異次元の少子化対策」をするのはいいのだが、所得が2000万円や3000万円の人たちに児童手当をあげるために、現役世代が多く負担する社会保険料を値上げするのはナンセンスだ。これでは子供は増えない。
こんな風に書いていくと、ダメなところより実績の方が多いような気もするのに、なぜこんなに不人気なのだろうか。よく「岸田首相は発信力が弱い」という批判があるのだが、実は国民が首相に求めるのは「発信力」や「説明力」ではなく「実行力」だという調査結果が出ている。
だからもしかしたら今の不人気の理由は国民の「気分」ではないのか。だったら年が明けて賃金が上がり、物価も落ち着いて、減税も実施されて、一息つけば国民の「気分」も晴れるのかもしれない。どうやら今の自民党には岸田氏をおろして誰か代わりを立てる「あて」はないようだから、それまでじっと我慢するしかないと思う。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】