コロナの影響による制限がなくなり、2024年から“4大会ぶり”に解禁された「声出し応援」が新たな絆を生んだ。 

1月4日~8日にかけて行われた「春の高校バレー」こと、第76回全日本バレーボール高等学校選手権大会。 

全国から代表各校が集うなか、元日の能登半島地震で被災した石川県の女子代表、金沢商業(22年連続49回目出場)はバスで6〜7時間かけて東京入り。1回戦で今治精華(愛媛)と対戦し、0-2と惜しくも敗れたものの、故郷へ勇気を送った。 

金沢商業
金沢商業
この記事の画像(11枚)

「春高に間に合うかわからない」と連絡が… 

金沢商業・南桃花キャプテン(3年)は試合後、涙ぐみながらこう話す。 

金沢商業・南桃花キャプテン
金沢商業・南桃花キャプテン

「地震が起きた元日は、午前中だけ練習があって、午後は休みでした。帰省先の輪島で被災して避難所にいた選手たちもいて、『(金沢に戻る)手段が無くて、春高に間に合うかわからない』と連絡がありました。自分たちは、今までコロナの影響で、万全な状態で試合に臨めたことがなくて、やっとここまで来られたのに、もしかしたらまた万全な状態で行けないかもしれない…という悔しい気持ちになりました。すごく不安でした。でも、次の日には全員が集まれて、東京に来られたのでよかったです」 

しかし、来場を予定していた同校の生徒による約200人の応援団は来られず、選手の保護者のみが会場に応援に駆けつけた。 

そんな金沢商業を後押ししたのは、彼女たちの1つ前の試合で同じコートで戦っていた茨城・明秀学園日立高校の応援団。明秀日立は試合に敗れたものの、吹奏楽部とチアリーダーがそのまま会場に残り、金沢商業を全力で応援した。 

茨城・明秀学園日立高校の応援団
茨城・明秀学園日立高校の応援団

金沢商業・小坂慎吾監督
「地震があってすぐに、金沢商業の生徒応援は中止と決まりました。そんな中、前日の夜に、知り合いの監督を経由して明秀日立さんについての連絡があって。応援に来てくれてすごく心強かったです」 

金沢商業・小坂慎吾監督 
金沢商業・小坂慎吾監督 

始まりはSNSで見つけた投稿 

試合が始まる前、明秀日立の吹奏楽部にも話を聞くことができた。今回の“友情応援”はどのようにして実現に至ったのだろうか。 

明秀日立・吹奏楽部 石井埜開(のあ)さん 
明秀日立・吹奏楽部 石井埜開(のあ)さん 

明秀日立・吹奏楽部 石井埜開(のあ)さん 
「もともと『金沢商業を応援したい』と生徒たち皆で話していたところ、X(旧Twitter)で『(震災で)金沢商業の応援団が東京に行けなくなったので、会場にいる人たちはどうか金沢商業を応援してほしい』というような投稿を見つけたんです。 

金沢商業の応援団と連絡が繋がったわけではないんですけど、Xでそういう情報を見かけたので、ちょうど明秀日立の1試合後ですし、自分たちに出来ることがないかと思って顧問の先生と相談したら、可能だということで応援に来ました。 

スコア(楽譜)の用意は無くて、打ち合わせも無く、いきなり応援本番…なんですけど、もともと自校応援のために用意していた曲を、自校には申し訳ないですけど流用させてもらいました。音楽で勇気や元気を届けられたら、と思いました。 

自分たちも小さい頃に東日本大震災を経験していて、震災のつらさや大変さは幼いながらも覚えているので、“金沢商業さんが勝って、どうか一人でも多くの人にうれしい気持ちを届けられたら”と思いました」 

試合に臨む金沢商業
試合に臨む金沢商業
 

SNSの投稿をきっかけに、明秀日立の高校生たちが主体となって実現した今回の“友情応援”。その甲斐もあって、金沢商業は第1セット中盤で7連続得点を挙げる場面もあった。 

友情応援を受けた金沢商業からは感謝の声が溢れる。 

金沢商業・小坂慎吾監督 
「日立さんの応援は、すごく心が温まるというか、ありがたかったです。皆の思いを背負う『春高』になったので、もう少し、勝てる試合を見せてあげたかったですね。でも、ちゃんと準備ができない中で、金沢商業の選手たちはよく頑張ってくれました。石川県はいま暗いニュースばかりなので、少しでも元気を与えられるようにいい試合をしようと臨みました」 

金沢商業・南桃花キャプテン 
「金沢商業のことを知らない方々がたくさん応援に来てくれて、本当にありがたいと思いました。応援に来られない地元の方々の分までがんばろうと思って試合に臨みました。 

今、石川では、自分たちより苦しい思いをしている人がたくさんいるので、明るい笑顔でその人たちを勇気づけようと皆で話し合いました。自分たち3年にとってはこれがラストの大会ですが、最後まで諦めずにいい顔で試合に臨めてよかったです。 

結果は残せなかったけど、これからは石川県全員で復興に向けて頑張らないといけないと思いました」 

試合後、会場にいる明秀日立へ向けて、挨拶をする金沢商業
試合後、会場にいる明秀日立へ向けて、挨拶をする金沢商業

金沢商業と明秀日立は今大会、「スポーツの精神を象徴する行為」という理由で「ベスト応援賞」を受賞。会場に来られなかった人たちの分まで、明秀日立の声援を力に変え、金沢商業の選手たちは、最後まで戦い抜いた。 

『S-PARK』スポーツ情報をどこよりも詳しく!
1月13日(土)24時35分から
1月14日(日)23時15分から
フジテレビ系列で放送