今シーズン3度目の週間最優秀選手(MVP)に選ばれ、ア・リーグのホームラン王争いで首位を独走中の大谷翔平。
8月1日(アメリカ時間)のトレード期間最終日前に、エンゼルス残留が確定した。
今回の『AKI猪瀬のMLBとっておきコラム』では、MLBジャーナリスト・AKI猪瀬氏が、大谷残留の裏側と、今後注目されるFA移籍について解説する。
大谷の影響で止まっていたトレード市場
8月1日(アメリカ時間)のトレード期間最終日に向けて、アメリカ国内ではエンゼルスの大谷選手のトレードの噂が白熱していましたが、エンゼルスが選手を補強する「買い手」側に回ったことにより全米を巻き込んだ大谷選手のトレード移籍の可能性は、消滅しました。
この記事の画像(4枚)トレードの移籍先として噂されていた、ドジャースやヤンキースなど、エンゼルス同様に“買い手”側に回っている強豪チームは、大谷選手の獲得の可能性を最後まで諦めていなかったので、大谷選手の残留が決定するまで、大型トレード補強が出来ませんでしたが、残留決定の報道が流れると「大谷選手を獲得できなかった」というため息と共にトレード市場は、一気に動き出しました。
大谷に対するラブレターのような記事
アメリカ国内では連日、大谷選手のトレード話で盛り上がっていました。
「いかに大谷選手が我がチームにフィットするか」「大谷選手を獲得出来れば、我々のチームは世界一に近ずく事が出来る」など、さまざまなメディアがトレードの可能性を報じてきましたが、そのような記事や報道の内容を精査すると、具体的なトレード交渉が行われているという内容のものは皆無でした。
ほぼ全て「大谷選手が自軍に加わってくれたら、とても素晴らしい事」など、大谷選手に対する熱烈なラブレターのような内容ばかりでした。
トレード移籍からFA移籍へのフェーズへ
トレード移籍話は収束しましたが、今後はトレード移籍からFA移籍報道にフェーズが移って行きます。アメリカ国内では早くも、10年800億円規模の歴史的な大型契約になる、FA移籍の一番手は、ドジャースなど、様々な報道がされています。
個人的には今回のトレード移籍消滅は、早い段階から既定路線だと予想していました。
今後、注目されるFA移籍騒動ですが、現時点ではエンゼルスと契約を結び、残留する可能性が高いと予想します。そして、契約内容ですがアメリカ国内で報道されているような10年規模の長期契約ではなく、MLB史上初となる年俸5000万ドル(約71億円、2023年8月1日時点1ドル=142円換算、以下同)以上の2、3年契約になると思います。
長期契約の可能性は?
過去に誰も見た事のない異次元の二刀流で大活躍を続けている大谷選手ですが、今のパフォーマンスが10年間続けられるかは、大谷選手本人も分からないと思います。勿論、本人は今の状態を維持しながら、更なる進化を遂げて長期間にわたり、プレーすることを目指して、厳しいトレーニングを続けて行くことになるでしょう。
しかし、長期契約を提示するチーム側には、大きなリスクになる可能性が残ります。なので、史上最高年俸の2、3年の契約を結び、契約終了後に、「今の状態ならば、二刀流が継続できる」と判断して、再び6000万ドル(約85億円)、7000万ドル(約99億円)など、自身が作った史上最高年俸をさらに更新していく契約を繰り返し結んで行く事になると思います。
トレード移籍話は、ポストシーズン進出を目指す、限られたチームが移籍対象チームでしたが、FA移籍となると基本的に移籍先候補はMLB全30チームになるので、トレード移籍話とは比較できない程にアメリカ国内は、狂気を感じる程の報道合戦が繰り広げられるでしょう。
(写真:AFP=時事)