関脇・豊昇龍の初優勝と大関昇進で幕を閉じた7月場所。

さらにもう一人話題をさらったのが、“令和の怪物”落合あらため伯桜鵬(前頭17枚目・宮城野部屋)の存在だ。

見事11勝を上げ、109年ぶりの初入幕優勝まであと一歩と迫ると、19歳とは思えない充実した相撲内容で、敢闘賞と技能賞をダブル受賞。初土俵から4場所目での三賞受賞は史上最速となった。

この記事の画像(9枚)

早くも相撲界を担う逸材と注目を集めている伯桜鵬の素顔を追うべく、場所前の稽古を取材した。

令和の怪物、強さの原点はサッカー?

相撲界に幾多の金字塔を打ち立てた元横綱・白鵬の宮城野親方。師匠は伯桜鵬の才能を次のように評した。

元横綱・白鵬の宮城野親方
元横綱・白鵬の宮城野親方

「押してもよし、組んでもよし。なんでも出来てしまう。相撲のセンスは抜群ですからね」

史上最多45回の優勝を誇る親方が称賛する伯桜鵬。この日、はにかんだ笑顔で取材スタッフを迎えてくれた。

「こんにちは宮城野部屋の伯桜鵬です!今日はよろしくお願いします」

照れながらそう語る表情に19歳の素顔が垣間見える。

そんな伯桜鵬に自らの強さの原点を聞いてみると、驚きの競技の名前が出てきた。

「(子供の頃)はじめはサッカーをしていて、スピードだったり、足技もサッカーが生きていると思います。50mは高校の時、6秒7とかでしたね。当時は(体重)140キロくらいありました」

サッカーで鍛え上げられた“軽快な足さばき”が、伯桜鵬の土俵での強さを支えているという。

さらに宮城野親方は「なんでも吸収してやろうという、そういう若者は初めてですね」と、その“吸収力”にも太鼓判を押している。

伯桜鵬は謙遜しながら次のように語った。

「スゴいと思ったら自分のものにしたいですし、大先輩方・大横綱の、色んな方のビデオを見ている点は、人より少し自信がある所です」

先輩力士を研究し、自分のモノにする“吸収力”。これもまた強さの秘密のようだ。

抜群の吸収力は、師匠のモノマネにも

その吸収力はこんな部分にも発揮されているという。

「師匠をつねに真似して来ているので、インタビューも師匠を参考にしてたら、声まで(親方に)似てきちゃって、みんなに似てる、似てるって言われています」

そこでスタッフが「モノマネを見せて下さい」と頼むと、快く引き受けてくれた。

「(親方が)大部屋に入ってくる時なんですが…。『おーい(モノマネ口調で)』って言いながら入ってくるんですよ(笑)(みんな)『はっ!』とか言って(笑)」

いたずらっぽく笑いながらそう語る伯桜鵬だが、自分を冷静にこう分析した。

「9割が人のモノ、1割が自分のオリジナルかも知れないです」

実はサインが苦手

取材中、稽古で熱くなった身体を冷やすため、びっしりと氷が入った水風呂に肩まで浸かる伯桜鵬。

ーー冷たいですか?
当たり前じゃないですか(笑)
 

すべてが万能に見える才能の持ち主だが一方で、苦手としていることもあるという。

実は「師匠からも“伯桜鵬”のサインが汚すぎる」と言われているのだ。

伯桜鵬は照れながら自分のサイン見せると「こんな感じです」と、色紙で顔を隠した。

「いずれ、かっこよくなると思います」

照れながら語る姿が初々しい。

偉大な師匠の背中を追い、“令和の怪物”として幕内の土俵に一大センセーションを巻き起こす19歳は、この名古屋場所の前に、カメラの前で次のように語っていた。
 
「(今まで)テレビで見てきた方々と、これから対戦することになりますし、憧れの師匠と戦ってきた人も居るんで、自分も目標は、(師匠と同じ)12番勝つことが目標です」

親方の初入幕と同じ勝ち星を堂々と宣言した度胸に、土俵上で見せた相撲内容の充実ぶり。

結果として11勝にとどまったものの、敢闘賞と技能賞のダブル受賞は、師匠の敢闘賞受賞を上回るスタートでもある。

底知れない可能性を持つ19歳の登場に、相撲界が沸いている。