7月25日、保険金の不正請求問題の発覚後、初めて会見を開き、謝罪したビッグモーターの兼重宏行社長。
この記事の画像(25枚)会見の中で何度も繰り返したのは、「経営陣は知らなかった」という言葉でした。
しかし、「めざまし8」がビッグモーターの元整備責任者などを取材すると、会見の言葉に対する数々の疑問と、不正を生み出す“いびつな企業風土”が浮かび上がりました。
告発動画を「変な動画」と一蹴
ビッグモーターの元工場長が、顧客の車のタイヤにネジを突き立ててパンクさせる、告発動画。動画を撮影した元整備責任者によると、タイヤがパンクした際の保証サービスを利用して保険金の不正請求が行われていたといいます。
会見を見た、元整備責任者は…。
元整備責任者:
経営陣に責任がないというところを強調するだけで、問題の解決に取り組もうという意識は感じられなかったです。
告発動画について、兼重社長は会見でこのように述べました。
ビッグモーター 兼重宏行 社長:
(不正の指示は)私からはあり得ませんよね、一切ありません。
YouTubeで変な動画が流れてましたけど。意味よく分からないんですけどね、 誰が何の目的で…。逆にいえば、それが問題じゃないかなと、自分の胸に手を当ててよく考えてと、メッセージを送りたいです。
告発動画を目的のわからない、「変な動画」と言い切り、問題であると主張しました。
元整備責任者:
仮に私が提供した画像のことでもし言われているのであれば、社長さん以下、経営陣が強いているノルマ、厳しいノルマだったり、厳しいやり方。そういうことがあった故に、ああいうこと(不正)が行われているんだよということ。私は世間に知っていただいて、社長が知ったのであれば、それを元にきちんと是正するというところに、考えを至らせてほしいんですけど。
告発動画についてそう話した上で、ビッグモーターの企業風土についてこう指摘しました。
元整備責任者:
それ(告発動画)を出す方がおかしいと言われるのであれば、“いびつな企業風土”と第三者委員会の方が言われているものが、いまだかつて抜け切れていないし、それを表している言葉じゃないのかというふうに思います。
さらに保険金の不正請求を巡っては、ゴルフボールを入れた靴下で車をたたくという悪質な行為も発覚していますが、これについても…。
ビッグモーター 兼重宏行 社長:
経営陣は知らなかった。これは事実でございます。耳を疑ったこんなことまでやるのかとがく然としましたね。ゴルフボールで傷をつける、ゴルフを愛する人に対する冒涜ですよ。
車を傷つけられた顧客ではなく「ゴルフを愛す人への冒涜」といい、改めて経営陣は知らなかったと主張。しかし、現役社員は経営陣や幹部が不正請求を知らなかったことは、「あり得ない」と指摘します。
現役社員:
現に私も、営業の方で不正請求をやったことがあったので、店長につめられて。幹部の人たちが現場をつめるので、現場の人は(不正を)せざるをえ得なかったと。
降格は“赤字” 脅威だった人事制度「葉っぱ落ちてたら減点」
「めざまし8」が、独自に入手したビッグモーターの人事に関するメール。差出人には、兼重社長の名前があります。
元整備責任者:
昇進する方は青字で書かれて、降格する人は赤字で書かれて。そういうのは全部社長メールで出るので。
昇進する社員と降格する社員が一目でわかるように色分けされ、社長から全社員に分かるようにメールで送信されるといいます。
社員教育について、兼重社長は「行き過ぎがあったかも分からないが、悪意を持ってやるということは一切ない」と答えていました。しかし…。
元整備責任者:
ただの脅威でしかなかったということで、不正につながったりそういうことになってしまうことで、「教育されてる」と思ってた人は全くいなかったと思います。
“脅威に感じていた”という人事制度。その圧力の一面が見える“ある疑惑”についても、会見では質問が飛びました。
ーー店舗前の街路樹に除草剤がまかれて、枯れていたのではないかと疑惑もありますが?
ビッグモーター 兼重宏行 社長:
環境整備で…。
ビッグモーター管理本部 陣内司 部長:
その内容に関しましては、こちらの方で認識しておりますが、こちらに関しましては、きちんと調査をさせていただきまして、説明させていただきたいと考えております。
ーー除草について細かく指示を出されたことは?
ビッグモーター 兼重宏行 社長:
全くありません。それは現場で判断していますから。
ビッグモーター 石橋光国 取締役:
敷地内の話と混同していると思いますので、そこだけ間違えないでいただければと思います。一応、環境整備の中で展示場の中に雑草が生えていないか、というのがあったと認識しております。
実際に2年前に撮影された、群馬県内の店舗前のグーグルストリートビューを見ると、歩道に街路樹が植えられていることが分かります。しかし、25日にフジテレビのカメラが同じ店舗に行くと、街路樹がなくなっていました。
この件では、道路を管理する県の土木事務所が、店舗の付近で木が枯れていると、被害届を出していることが分かりました。
さらに、めざまし8が入手した「環境整備点検」という販売店舗の清掃状況などを評価するための内部資料を見ると、全部で21のチェック項目が書かれています。
その項目のひとつに「店舗前の歩道10mと展示場、敷地内には雑草、砂がなく掃き清められているか?」というものがありました。
元整備責任者:
葉っぱとかが落ちてたら減点されるので。でも葉っぱっていつ落ちるか分からないので。葉っぱが落ちないようにするためには、枝を切ったり、枯らしてしまったり。そういうふうなことを、やらないといけなくなる。
元整備責任者によると、点検は抜き打ちで行われ、落ち葉も“減点の対象”だったといいます。
元整備責任者:
総合得点から減点をしていくみたいな感じで、その得点によって社員のボーナスが査定に関わるというのと異動になったり、降格になったり、結構シビアなものでした。
社長の会見を経てもなお、多くの疑問が残る不正問題。
ビッグモーターは問題の責任を取り、26日付で兼重社長が辞任することを発表。国交省は 26日の午後、ビッグモーターからヒアリングを行う予定です。
(めざまし8 7月26日放送)