トランプ前大統領の邸宅を家宅捜索した連邦捜査局(FBI)について、米国の有権者の過半数が「バイデン大統領の私的なゲシュタポ(秘密警察)だ」と信じているという調査結果が出た。

FBIの家宅捜索を受けたトランプ前大統領
FBIの家宅捜索を受けたトランプ前大統領
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調査をしたのは大手世論調査会社「ラスムッセン」社で、FBIの捜索から一週間後の15日から16日にかけて全米の有権者を対象にFBIについて質問した。

設問は4項目あり、民主党支持の回答者はFBIの捜索を概ね是認したのに対して、共和党支持者はFBIへの信頼を失ったと予想通りの回答を得たが、注目されたのは4項目の次の意見に対する反応だった。

「FBIのトップには政治的に偏ったならず者のグループがおり、FBIをジョー・バイデンの私的なゲシュタポとして利用しているという意見があるが、この意見に同意するかしないか?」

バイデン大統領
バイデン大統領

これはトランプ前大統領の政治顧問だったロジャー・ストーン氏がラジオ番組で語ったもので、FBIが偽の「スティール文書」を根拠にいわゆるロシア疑惑の捜査を進めてトランプ前大統領の関係者を不当に追求していったことなどから、FBIをかつてのナチス・ドイツのヒトラー総督の秘密警察「ゲシュタポ」同然だと言い、保守派がFBIを批判する際にこの揶揄をなぞらえるようになっていた。

この設問に対する回答だが「強く同意する」34%「どちらかといえば同意する」19%で「同意」が合わせて53%に及んだ。一方「強く同意しない」26%「どちらかといえば同意しない」10%で「不同意」は合計でも36%に過ぎず「分からない」が10%だった。

ラスムッセン社は回答者の「支持党派別」の分析も行っており共和党支持者の61%が「強く同意する」のは予想できたが、民主党支持者の中にも「強く同意する」が18%「どちらかといえば同意する」も19%も居たのは意外だった。

FBIは中間選挙間近の政治的に微妙な時期に、「スパイ容疑」などで前大統領邸宅に自動小銃で武装した係官も動員して捜索に入り、機密文書捜索の名目でメラニア夫人の衣装棚まで探したり捜索令状に押収対象として記載されていなかった前大統領の旅券を押収して行動の自由を規制することになったことが明らかになるにつれて、捜索の正当性に疑問が広がってきているように見える。

メラニア夫人とトランプ前大統領
メラニア夫人とトランプ前大統領

これに対してトランプ前大統領は19日、自ら運営するSNS「トゥルース・ソシアル」に次のような声明を投稿した。

「大事な中間選挙の直前に私のマール・ア・ラーゴの家に不法に押し入ったことについて修正4条に基づく申し立てを行う。これにより私のみならず全てのアメリカ人の権利が史上かつて見られないほどに侵害された。今回に限らず彼らは私の選挙運動をスパイしていたのだ。米国史上最大の魔女狩りは6年も続いてきたのだ。この辺で終止符を打たせなければならない」

合衆国憲法修正第4条は「不合理な捜索、押収、勾留の禁止」を定めたもので、トランプ前大統領が法的申し立てを行えば、FBIが「ゲシュタポ」かどうか裁かれることになる。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

 

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。