ご飯の味わいを左右するのは、炊飯道具だけではありません。せっかく粒感のある炊きあがりになっても、しゃもじでほぐすときにご飯粒をつぶしてしまってはもったいない。しゃもじはご飯がくっつきにくく、先端が薄いものを選ぶと良いでしょう。

おむすびや卵かけご飯は「粒感」が命

おむすびは「しっとり感」と「粒感」が命。個人的には、ほどよい粘りがあって、口の中でご飯粒がほろりとほどけ、噛んだときに歯を軽く押し返す弾力があるお米が好みです。ここで言う「ほどよい粘り」とは、炊きあがったご飯にしゃもじを入れたときにご飯の粘りが感じられ、ふりかけや刻み菜などの小さな具材が混ざりやすい粒離れがある程度。粘りがあるのでおむすびを成型しやすく、食べたときには口の中で粒がほどけ、軽やかな食べ心地を楽しむことができます。

口の中でほどける粒感がおむすびの要
口の中でほどける粒感がおむすびの要

冷めてから食べることが多いおむすびは、特に冷水での長時間吸水が重要です。米粒のすみずみまで水と熱を行き渡らせることで、冷めても硬くなりにくくなります。

卵かけご飯のお米も、やはり「粒感」が命。粒が際立つお米を選ぶと、とろりとした卵黄や卵白の中にご飯粒の存在をしっかりと感じることができ、相性がぴったりです。ひとくちに「粒が際立つお米」と言っても、粘りが強いのか弱いのか、硬めなのかやわらかめなのか、あっさりなのか重ためなのか、味わいはさまざまです。

「粒感」があるご飯は生卵と相性ぴったり
「粒感」があるご飯は生卵と相性ぴったり

ご飯の味わいは、お米選びだけでなく、炊飯道具や炊き方によっても変わります。チャーハン用のご飯を炊くときは、粘りが少ない品種を使って金属製の鍋でぱりっとした粒感を生み出すのも良いでしょう。

お米は今やあって当たり前の存在として考えられ、食卓や料理の主役はおかずになりがち。おむすびはどんな具にしようかとか、炊き込みごはんはどんな材料を使おうかなどと考えながら作るのも楽しみの一つですが、さまざまなお米や炊飯を試してみると、ご飯の新しい楽しみ方やおいしさに出会えるかもしれません。

柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、お米ライター

柏木智帆
柏木智帆

米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター。大学卒業後、2005年神奈川新聞社に入社、編集局報道部に配属。新聞記者として様々な取材活動を行うなかで、稲作を取り巻く現状や日本文化の根っこである「お米」について興味を持ち始める。農業の経験がない立場で記事を書くことに疑問を抱くようになり、農業の現場に立つ人間になりたいと就農を決意、8年間勤めた新聞社を退職。無農薬・無肥料での稲作に取り組むと同時に、キッチンカーでおむすびの販売やケータリング事業も運営。2014年秋より都内に拠点を移し、お米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送りながら、お米の消費アップをライフワークに、様々なメディアでお米の魅力を伝えている。また、米食を通した食育にも目を向けている。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任。
著書に『知れば知るほどおもしろいお米のはなし』(三笠書房)、『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)がある。