犬を飼っている人はもちろん、愛犬家のみなさんにぜひ知ってほしい事実がある。今、人間の言葉を理解する“天才犬”が、世界だけでなく日本でも、次々と見つかっている。

私がイギリスで出会ったボーダーコリーのハービーくん(6歳)はその1頭だ。「ハービー、ゴー・ファインド、ウォーターメロン!」。飼い主のアイリーンさんがそう言うと、彼は迷いなく“スイカ”のぬいぐるみをくわえて戻ってきた。

“スイカ”のぬいぐるみをくわえて戻ってきたハービーくん
“スイカ”のぬいぐるみをくわえて戻ってきたハービーくん
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100個ほどのぬいぐるみが床に散らばり、似た形も色も混じっているのに、言葉だけで選び分ける。犬を飼っている筆者も、その能力に驚いた。

「人間の言葉で“もの”を区別し、名前をたくさん覚えられる犬」は、世界にわずか49頭しかいない。ハービーくんはその一頭として地元紙にも取り上げられ注目を集めている。ハービーくんが覚えているぬいぐるみの名前は220種類以上というから驚きだ。さらに、(ぬいぐるみの)名前を聞き分けるだけでなく、指定された相手に運んだり、箱へ片付けたりと、ここまでくると「賢い!」だけでは足りないレベルだ。

天才犬を見分ける3つのポイント

では、そんな“天才犬”はどうやって見分ければいいのか。ヒントをくれたのが、犬の語彙能力を研究する「Genius Dog Project」だ。ポイントは「芸」ではなく、“言葉とモノが結びついているか”だという。

「geniusdogchallenge.com」ホームページより
「geniusdogchallenge.com」ホームページより

1つ目のポイントは、10個以上のおもちゃを、言葉だけで安定して持って来られるか。たまたま当たるのではなく、日を変えても、置き方を変えても再現できること。15個の名前を言い分けるSNS動画を見て研究者が連絡してきたこともあるそうで、二桁はひとつの目安になる。

2つ目は、新しい名前を直ぐに覚えるかどうか。「数回聞いただけで覚えてしまう犬がいる」と研究では示唆されている。

そして、3つ目は忘れにくさ。短期で覚えたおもちゃでも、長くしまっておいた後でも当てられる。実験では、集中的に覚えたおもちゃの名前を“2年後”でも当てられたケースが報告されている。

多くの犬は、実はおもちゃの名前を覚えるのがとても苦手だという。研究では一般の犬34頭に「2つの名前」だけ教えても、覚えることができたのは1頭だけだったという報告もあるほどだ。

筆者の愛犬はぬいぐるみに見向きもせず
筆者の愛犬はぬいぐるみに見向きもせず

筆者の犬もお手やお座りを習得し、自分たちの名前「ちゃま」「まめ」は認識しているが、ぬいぐるみには興味を示そうともしない。「ご飯」「さんぽ」という言葉には反応するのだが……。

 “トイプー”も“雑種”も天才わんこ

ひょっとしたら犬種と何か関係あるのだろうかと考えた。調べてみると、確かに“天才犬”の多くがボーダーコリー系だが、シーズーやトイプードル、コーギー、ラブラドールなども例があり、「犬種ランキング」のような単純な話ではないようだ。

犬種別(41頭)
ボーダーコリー:23
ボーダーコリー(ミックス):4
ラブラドール・レトリーバー:3
ポメラニアン:2
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク:1
ミニチュア・オーストラリアン・シェパード:1
ブルー・ヒーラー×オーストラリアン・シェパード(ミックス):1
ジャーマン・シェパード・ドッグ:1
トイプードル:1
ゴールデン・レトリーバー×ミニチュア・プードル(ミックス):1
シーズー:1
ペキニーズ:1
雑種:1

国別(41頭)
アメリカ:17
イギリス:9
ブラジル:5
カナダ:3
ノルウェー:2
ハンガリー:2
オランダ:1
ポルトガル:1
スペイン:1
出典:Dror et al. 2023(Scientific Reports)

この調査から約2年たった今、日本を含め世界で確認されている「天才犬」は49頭。才能を伸ばすコツについて、ハービーくんの飼い主のアイリーンさん、「Genius Dog Project」などに話を聞いた。

まず、遊びやトレーニングは集中が切れる前に切り上げ、毎回「できた」で終えることが上達の近道だという。成功体験を小さく重ねるほど、次の意欲につながる。

才能を伸ばすカギは…

そして重要なのは、報酬が必ずしも“おやつ”である必要はない点だ。天才犬たちの学習は、本質的に遊びの延長で進む。ハービーくんの家でも、飼い主は「大げさに喜び、大げさに褒めること」を欠かさない。犬が学ぶのは言葉だけではなく、「この時間は最高だ」という体験を記憶することなのだ。

ハービーくんの飼い主アイリーンさん「大げさに喜び、大げさに褒めること」
ハービーくんの飼い主アイリーンさん「大げさに喜び、大げさに褒めること」

犬と笑い合える日々を重ねること。犬の幸せをまっすぐに願い、そのために最善を尽くすこと——それが巡り巡って、その犬の力をいちばん引き出すのだと思う。

この取材を通して筆者もまた、我が家のわんこたちと、今日からいっそう丁寧に、誠実に、向き合っていきたいと感じた。
(FNNロンドン支局長 髙島泰明)

髙島 泰明
髙島 泰明

FNNロンドン支局長
09年から警視庁、神奈川県警、厚生労働省、宮内庁を担当
東日本大震災では故郷・福島で放射能汚染や津波被害の取材に奔走
「めざましテレビ」から夜のニュース、選挙特番などでデスク、プロデューサーなどを経験
平昌・パリ五輪で現地取材、イット!「極ネタ!」演出も務める
愛犬家で「人と犬の幸せを育む」記事を書くことも大きなテーマ