漆黒ボディから繰り出す“シャー”

取材当日、「保護猫カフェねこかつ川越店」で“シャー”と挨拶してくれた黒猫の鏡月(推定5歳・女の子)も、その一例だ。

キャットウォークで寝ていた鏡月
キャットウォークで寝ていた鏡月

保護前の鏡月がいたのは、個人宅の敷地に作られた鳥小屋のような囲いの中。大量の猫と一緒に閉じ込められ、夏は灼熱、冬は極寒という厳しい環境で暮らしていたという。

お手本のような“シャー”を決めてきた鏡月
お手本のような“シャー”を決めてきた鏡月

飼い主の高齢女性が亡くなった後、実家に戻った息子が「殺処分する」「山に捨ててくる」と騒ぎ、猫の世話を手伝ってきた近隣住民とのトラブルに発展。そんな境遇から保護された。

威嚇の裏にある人間の問題

梅田さんは、人を威嚇する猫=“シャーシャー猫”が生まれる背景についてこう語る。

「猫が“シャー”と言うのは、攻撃的な性格だからというより“怯えているから”という場合が大半です。猫がシャーシャー猫になってしまうのは、すべて人間の側に原因があると私は思っています」

人間への警戒心の強いシャーシャー猫も、猫同士では一緒にいる場面も
人間への警戒心の強いシャーシャー猫も、猫同士では一緒にいる場面も

そのためシャー猫譲渡会の会場では、多くの猫が静かに身を縮めている。「無理に近づいて“シャーと言わせる”ことは避けてほしい」と梅田さんは強調する。

「慣れない場所で大勢に見られることで、参加する猫たちは固まっている場合が大半です。ゆっくりと猫のペースに合わせて、ただ見守っていただければ十分です」

人慣れのスピードは未知数

人間への不信感の根が深い猫たちでも、寄り添う時間が積み重なれば、少しずつ表情が変わり始める。春日部市の多頭飼育崩壊現場から保護されたオパール(推定7歳・女の子)も、まさにその一頭だ。