新米の価格高騰が、飲食店にとっても大きな悩みの種になっています。福井市内の飲食店を取材すると、物価上昇や人件費のアップなど、複合的な要因で頭を悩ませていました。


1カ月でコメ仕入れ値が90万円アップ

福井市内にあるとんかつ店「熟成かつ天膳」。看板メニューの「熟成とんかつ」は、やわらかくジューシーな味わいが特長で福井市と永平寺町に合わせて4店舗を構える人気の店です。
  
県産米にこだわったごはんの量は、茶碗に大盛りの250グラム。客には嬉しいボリューム感ですが、店にとってはコメの価格高騰が大きな打撃となっています。
 
天谷健二社長は「仕入れ値は、去年の新米が出るまでは30キロ9500円前後だったが、新米が出てからは1万5000円前後。さらに今年の新米は、10月から2万3000円前後といわれている」と困惑しています。
 
この店で消費されるコメの量は毎月約2トン。コメの仕入れにかかるコストは、この1年で1カ月あたり約90万円上がっています。

価格と品質、客の満足度を得るには―

コメの価格高騰を受け、店の売りでもあった「ごはんおかわり自由」の無料サービスを取りやめました。
   
「去年のコメ値上がりのタイミングでごはんおかわりを有料化したが、創業の地である永平寺町が学生の町だったので、有料化には非常に抵抗があった。経営を考えると、今のこの物価高では、ごはんおかわり自由を維持していくのは困難」(天谷社長)

コメの価格が上昇することは覚悟していたという天谷社長。しかし、ここ1年の急激な値上がりは想像を超えていました。
  
かといって、コメどころの福井で県外産のコメに切り替える選択はできないと天谷社長はいいます。「商売をしている以上は、価格と品質とお客さんの満足度が一致することが大事。今のコメ価格の上昇分を価格転嫁したい思いがあるが、ハナエチゼン、コシヒカリを使って品質を維持したい思いもあり、バランスが大事だと思っている」

コメ以外の経費も悩みの種に

店を苦しめているのは、コメの高騰だけではありません。
  
多品目に及ぶ物価高に加え、10月には最低賃金の引き上げにより人件費も上げざるを得ないこと。コストを上昇させるいくつもの原因が一度に重なったことで、より経営が厳しくなっているといいます。
 
「コメ以外にもこの酷暑で、豚肉や鶏肉などの食品が上がったほか、人件費、物流コスト、ここ2年間でさまざまなものが値上がりしていく中で、店もこの2年間で4回の値上げをしている」とし、客が減るリスクを考えるとこれ以上の値上げには踏み切れないという天谷社長。答えの出ない苦悩の日々が続いています。

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。