長野県中野市の4人殺害事件の裁判。公判2日目の9月5日、被告の両親が証人として出廷し、事件当時の被告とのやりとりなどを明かした。母親は被告の精神状態について、「心の病と思ったが、頑張っていたので疑わなかった」「親の愛情で治ると思った」などと述べた。
被告「黙秘します」
殺人などの罪に問われている中野市の青木政憲被告(34)。
起訴状などによると、2023年5月、散歩していた女性2人をナイフで刺して殺害した上、駆けつけた警察官2人を猟銃とナイフを使って殺害したとされている。

裁判は、被告の「刑事責任能力」と「量刑」を争点に行われ、4日の初公判では、起訴事実について、被告は「黙秘します」と述べていた。
母親「心の病と思ったが…」
5日の証人尋問では、まず、青木被告の母親が出廷し、遺族に向かって深々と頭を下げたあと、証言台の席に座った。
母親は、仕事先で事件の連絡を受け、すぐに帰宅したという。
その時の被告は―。
被告の母親(証人):
「周辺をうろうろ、銃撃戦をする構えだった。ショックを受けて、息子を守りたい、自分がいれば相手も撃ってこないから、息子のそばに寄り添っていたいと思い、一緒に移動した」
被告は興奮状態で、女性2人については「俺のことを『ぼっちぼっち』とばかにしているからやったんだ」と答え、警察官2人については、「撃たれると思って、撃たれる前に撃ったんだ」と答えたという。
母親「私が撃とうか」
自首を勧めると、「長い裁判の末、絞首刑になる。長くつらく苦しい、そんな死に方は嫌だ」と話し、猟銃を首にあてて自殺を試みたという。

被告は猟銃を自分の体にあてて、自害しようと試みたが、できなかったので、母親は「私が撃とうか」と言ったという。
これに対し、被告はうつぶせになって、「心臓はここにあるから、ここを撃ってくれ」と言い、母親に猟銃を渡したという。
母親は猟銃を持って、その場を去ったと証言した。
「息子を守りたいと必死でした」
一方、家の敷地内に倒れている被害者がいることはわかっていたが―。
被告の母親(証人):
「確かめようとはしませんでした。いつでも撃たれる覚悟でしたから。息子を守りたいと必死でした」
続いて、被告の精神状態についての話に。
被告は、大学生の頃から周囲に「ぼっち」「きもい」などと言われると訴えるようになったが、医療機関の受診や治療は受けていなかった。
被告の母親(証人):
「様子から心の病と思ったが、頑張っていたし、信じて疑わなかった」「親の愛情で治ると思った」
猟銃の所持については、「最初は不安があったが、精神科医の診断をパスして息子は問題ないと安心した」などと話した。
父親に「もうやめるわ…」と電話
続いて、父親も証人として出廷。自宅に立てこもっていた被告との事件発生翌日午前4時ごろの電話の内容を明かした。
青木被告は「もうやめるわ…」と話したの対し、父親は立てこもるのをやめるのか、生きるのをやめるのかわからなかったので、「人を傷つけることなく出てこいよ」と息子に言ったという。

また、被告は「温かいものを飲んで行くわ」、父親は「すぐか」と聞いたら、被告は「もう少ししたら家を出る」「(飼っている)犬のことを頼む」と話したという。
9月10日は、被告人質問も行われる予定。