食卓を彩り、私たちの健康を支える四季折々の野菜と果物。せっかくなら、おいしく上手に食べたいもの。野菜と果物を知り尽くした“野菜ソムリエ上級プロ”の堀基子さんが、おいしさと栄養を余すところなく引き出す方法をお伝えします。

文・写真=堀基子

ワタは味噌汁やかき揚げに

ゴーヤーを調理したときに、中のワタをどうしていますか?「ワタは苦いので、スプーンでしっかり取り除きましょう」と書かれているレシピも多いので、かき出して捨てている方も多いのでは?実はそれ、とてももったいないことをしています。

ゴーヤーのワタをちょっとつまんで食べてみると分かりますが、ほとんど苦味がありません。しかもビタミンCはなんと果肉の1.7倍というデータもあるのです。ゴーヤーチャンプルーなどを作った際に出たワタは、ぜひ天ぷらやみそ汁の具などに使ってみてください。

ゴーヤーのワタのかき揚げ
ゴーヤーのワタのかき揚げ
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一番のオススメはかき揚げです。ワタから種を取り除き、ひと口大にちぎり、ゴーヤーの端っこを薄く切り、一緒に天ぷらの衣で和えて揚げると、エコで美味な一品になります。

ゴーヤーのビタミンCの含有量は100g当たり76mgとレモンの約1.5倍も含まれており、約1/2本を食べれば1日分のビタミンC推奨量を満たせます。そのうえゴーヤーのビタミンCは加熱調理に強く、油で炒めると吸収率が高まるベータカロテンも豊富なため、ゴーヤーチャンプルーはとても理にかなったメニューなのです。また、ゴーヤー特有の苦味成分のモモルデシンには、食欲を増進する効果が期待できますので、食欲がない日にもオススメです。

ゴーヤではなくあくまで「ゴーヤー」

南国野菜のイメージが強いゴーヤーですが、北は北海道から南は沖縄県まで各地で生産されており、全国の総出荷量の約1/3は私が住む沖縄県産です。14世紀末に原産地の東インドや東南アジアから中国へ伝わり、その後16世紀頃に日本へ伝来したといわれていますが、沖縄へはひと足早く15世紀前半には伝わっていたそうです。

沖縄県民が愛してやまない、伝統的な島野菜のひとつでもあるゴーヤー。ちなみに、その名称は「ゴーヤ」ではなく、あくまでも語尾を伸ばす「ゴーヤー」です。

ゴーヤではなくあくまで「ゴーヤー」
ゴーヤではなくあくまで「ゴーヤー」

かつて琉球王朝の時代、王の健康を守り支えるために王府の侍医が中国の北京へ留学し、帰国後に上梓したた『御膳本草(ぎょぜんほんぞう)』という食医学書があります。そこには琉球でも入手できる300以上の食材について、それぞれの効能や食べ方の禁忌などが詳しく紹介されており、医食同源を今に伝える貴重な非常に文献です。

その品目の一つが「がふやあ」、つまり「ゴーヤー」で、歴史的にも「ゴーヤ」ではなく「ゴーヤー」が正しいわけです。この呼び名の正誤を指摘するゴーヤー警察なるものもネット上などに存在するようですので、これからはぜひ「ゴーヤー」と呼んでいただければと思います。