(2)スキル標準化への試み~スキルはプロトコルになる~
プロトコルという言葉があります。外交儀礼とかインターネットの世界では、通信接続手順、データを送受信するためのルールを意味します。

異なる世界同士がコミュニケーションを取るための共通の基準のようなものです。同様にスキルについても、スキルに対する異なる認識を擦り合わせ、スキルの標準化が求められるのです。しかしこれは言うは易しで、世界中で賛否両論の議論が起きています。

社内でスキルの共通見解を作ることが大事( 『リスキリング【人材戦略編】』から抜粋)
社内でスキルの共通見解を作ることが大事( 『リスキリング【人材戦略編】』から抜粋)

例えば「営業推進力」といった用語があるとします。スキルを社内の共通言語にしよう、という試みの最初の段階では、「あれ、○○さんの言ってるスキルと、△△さんの言ってるスキル、意味が違うんじゃない?」といった意見の違いが頻繁に出てきます。

しかし、徐々にスキルに対する認識が平準化してくることで、社内での会話が成立するようになってきます。

人事部の皆様との会話の中で、「互いのスキルの認識が噛み合わないからスキル管理は意味がない」と、この時点で思考停止してしまっている方も多く散見します。

しかし、スキルテックを活用してまず共通言語を作り、相互認識を確認し、徐々にレベル感が統一されてくるのです。

例えば、A部門のマネージャーの評価基準と、B部門のマネージャーの評価基準が異なるので、部下の評価や昇進昇格のスピードに不公平が生じることはままあります。そのため、何度も何度も丁寧に管理者の評価者研修を定期的に実施し、組織内での目線合わせを行っていきます。

管理職の評価者研修同様に、社内のスキル標準化、認識のすり合わせを行う議論が必要なのです。そのために、スキルテックは一旦標準形を作る上で大きな役割を果たします。

『AI 時代の組織の未来を創るスキル改革 リスキリング【人材戦略編】』(日本能率協会マネジメントセンター)

後藤宗明
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies 日本代表。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』(ともに、日本能率協会マネジメントセンター)、『中高年リスキリング』(朝日新聞出版)がある。

後藤宗明
後藤宗明

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies 日本代表。
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ 銀行)入行。営業、マーケティング、教育研修事業を担当。2020年、10年かけて自らを「リスキリング」した経験を基に、リクルートワークス研究所にて「リスキリング~デジタル時代の人材戦略~」「リスキリングする組織」を共同執筆。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を可能にするリスキリングプラットフォーム、SkyHive Technologiesの日本代表に就任。
石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所 客員研究員を歴任。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。