全身の筋肉が緊張すると

「寝つけない」の原因としてもう1つあげられるのが、さきほどもお話しした全身の筋肉の緊張です。

なかなか寝つけないとき、人は「また眠れなかったらどうしよう」「朝がつらいなあ」などとつぶやいているものです。そうすると寝苦しく、少しまどろんでもすぐに目が覚めてしまいます。

全身の緊張は上半身に出やすい(画像:イメージ)
全身の緊張は上半身に出やすい(画像:イメージ)

このとき、全身の筋肉は頭のてっぺんから足の先まで、おしなべて緊張しています。特に緊張しているのは、顔面、首、肩、二の腕から前腕、胸の筋肉にかけてです。下半身よりも上半身です。この筋肉の緊張は交感神経の興奮性を高め、それがさらに筋肉を緊張させます。

こうして悪循環が形成され、不眠はいっそう強化されていくのです。

この筋肉の緊張も、「頭の中のつぶやき」と同様に、なかなか意識されません。力を入れているつもりはないのに、知らず知らずのうちにあごや肩、腕に力が入っています。ふと気がついて緩めても、いつしか自然と力がこもっています。特に、あごに力が入っています。このあごの筋肉(咬こうきん筋)の力を抜くようにします。

具体的には、電車で居眠りしている人を想像して口をぽかんと開けてください。そして、これでもか、というくらい徹底的にあごの力を抜き続けてください。そうすると、自然と首から肩にかけての筋肉群も力が抜けてきます。さらに、上腕から二の腕へと脱力が波及し、やがて全身がリラックスしてきます。

「頭の中での独り言の消去」と「あごの脱力」は同時に行っていきますが、慣れないうちはどちらか1つに集中して、1つずつやっていきましょう。決して難しい方法ではありませんので、要領さえつかめてしまえば必ずできるようになります。

『「月曜の朝がつらい」がなくなる本』(三笠書房)

森下克也
心療内科医、医学博士。著書に『決定版「軽症うつ」を治す』(角川SSC新書)、『うつ消し漢方』(方丈社)、『もしかして、適応障害?』(CEメディアハウス)他、多数。

森下克也
森下克也

心療内科医、医学博士。1963年生まれ。久留米大学医学部卒業後、東京女子医科大学で8年間の脳外科医のキャリアを経て、米国へ留学。帰国後は浜松医科大学心療内科にて、全人的医療の提唱者である永田勝太郎先生に師事、漢方と心療内科の研鑽を積む。浜松医科大学病院、浜松赤十字病院、豊橋光生会病院などを経て、2006年精神科漢方の専門施設としてもりしたクリニックを開業、現在に至る。約2万人の精神疾患や不定愁訴の患者を漢方で治療。著書に、『決定版「軽症うつ」を治す』(角川SSC新書)、『うつ消し漢方』(方丈社)、『もしかして、適応障害?』(CEメディアハウス)他多数。