夏休みの子どもたちが『大学』で学んだ。『子ども大学くまもと』で学んだ子どもたちは、いつも通っている小学校とは違う授業を受け、たくさんの刺激を受けたようだ。
「米が実るのに、なぜ雷が関係する?」
今回で4回目を迎えた『子ども大学くまもと』、7月27日は熊本保健科学大学を会場に、小学4年から6年生の子どもとその保護者などが参加した。

1限目の講師は田上善浩さんです。田上さんは新たな教育の選択肢として、2018年に熊本市に開校し、現在約100人の小中学生が通う『ウイングスクール』の校長。

田上さんは「お米が豊かに実るのに、雷はなぜ関係する?近くの人と相談してみて」と、コメの成長と雷の関係について子どもたちに質問し、答えを引き出しながら説明していく。

田上さんは「空気って酸素や二酸化炭素、窒素でできている。これは水に溶けないけど雷が鳴ると(窒素は)窒素化合物に変化する。これは水に溶ける。だから雷が鳴ると空気中の窒素が化学変化して、雨に溶けて自然の養分が降り注ぎ、それを吸い込むから(稲は)一気に育つ」と、雷が米を実らせるメカニズムについて説明した。

また、「カミナリってどんな字を書くか知ってる?雨に田んぼって書く。雷は別名、イナズマって言う。稲の妻って書く。だから昔の人はこんなことも分かってやっていたんだね」と、漢字の成り立ちにも触れ、子どもたちの知的好奇心を刺激する。
『ポジティブ番長』が自身の半生を講演
そして2人目の講師は『ポジティブ番長』こと横田久世さん。横田さんは「私、脚がないんですよ。指がないんですよ。両手の指がありません。私のような体の人を身体障害者って言います」と話した。

横田さんは7年ほど前、突如、電撃性紫斑病に襲われ両手の指と両脚を切断した。横田さんは「お母さんの足がなくなる、お母さんの指が全部なくなる、って想像してみて。〈信じられない〉って思うよね」と話す。

また、「ご飯を食べたいけど自分では食べられない。トイレに行きたいけど自分では行けない。着替えたいけど着替えもできない。その状況から私はやっぱり最初は死にたかった。先生に助けてもらった命だけど、死にたくて、死にたくてたまらなかった。どうして私がこんな体にならなきゃいけないの。どうやって生きていけばいいのって。泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、苦しんだ」と話す。

それでも横田さんは懸命にリハビリに励み、退院し自宅に帰ったが、「スーパーに着くと(一緒に来た)子どもたちがいない。私は一人で買い物して終わろうとすると、娘たちが寄ってきて荷物を入れてくれて帰る。娘たちは『ママのせいで、ジロジロ人から見られる』私は『だったら一緒に歩かんならいいたい』と言った」と、子どもとの当時の葛藤を明かした。

そんな中、横田さんは熊本城マラソンへの出場を決める。横田さんは「〈また昔のように笑えるんじゃないか〉〈また一緒に腕組みながら、笑いながら過ごせるんじゃないか〉と思ったから出ようと決めた」と、当時を振り返る。

初めは反対していた娘たちも当日は沿道に立って応援してくれ、「『ママごめんね』って娘は言った。娘は『私が一番不幸だって思った』と言った。どうして私のママが障害者にならなきゃいけないの?って。私も必死で自分が生きることしか考えてなかったけど、あなた(娘)もつらかったんだ『ごめんね、ありがとう』(と娘に言った)その時初めて子どもの気持ちを知りました」と話す。
「悲しいときに、この授業を思い出したい」
横田さんは「私が今『ポジティブ番長』を名乗って行動できるのは、挑戦してきたから。やりたいことをやると、どんどん輝いていきます」と話し、講師の話を聞いた子どもたちは互いに語り合い、考えをまとめ、発表した。

参加した児童は「自分も悲しかったと思うけど、マラソンを走ろうと決めて、みんなが笑顔になったから〈これからは自分も悲しいときもあるかもしれないけど、この授業を思い出したい〉と思いました」と、小学校では学べない大きなことを学んだようだ。

『子ども大学くまもと』の宮津航一理事長は「子どもたちが、自分から手を上げて思った通りに心で感じたものを発表している姿を見て、〈こういう場所がもっともっと必要だ〉と感じた」と話す。

『子ども大学くまもと』の次回は春休みの2026年3月に開かれる予定。
(テレビ熊本)