無理に続ける必要はないが…
また、思春期に入ってくると、できないことを恥ずかしいと思う気持ちも強くなります。できないことをやり続けるのはつらいですから、「こんなのは意味がないことだ」と言って投げだす方がずっと楽です。大人にはそれが許される面があります。
走るのが苦手だったり、球技が嫌いだったりする人は、ほかの運動をすればいいだけですし、苦手なことを無理に続ける必要はありません。
しかし、子どもはそういうわけにもいかず、学校でやらなくてはいけないこと、親に「やりなさい」と言われることからなかなか逃げられません。
さらに、今の子どもたちは、日々成績やSNSで評価される毎日を過ごしています。大人も職場などで評価されることはありますが、子どもほどに毎日常に評価され続けているわけではないと思います。
思うような評価がもらえないことで傷つきたくないために、あえて最初から頑張らないという予防策を取ることもあるのです。
こうした子どもたちの苦しみや葛藤を、わかろうとする努力をしてあげてほしいと思います。高圧的に「あきらめないで続けなさい」「もっと本気になりなさい」と言っても、子どもがその通りにしないのは仕方がない面があります。親としては、子どもが本気になれることを探す旅を、応援し続けるしかないのかもしれません。

内田舞
小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。