子どもが幼い場合、あらかじめ危険を排除したり、安全を確保したりするなど親が前線で我が子を守る。しかし、我が子が大きくなってもそれを続けることは不可能に近い。いずれ自立して、自分の力で生きていく日がくる。
そうしたときに欠かせないのが「レジリエンス」。転んでも自力で立ち上がってほしいが、幼いときはつい転ぶ前に手を出してしまう。しかしそれでは「レジリエンス」が育まれにくい。
では、親はどんな姿勢でいればいいのか。
3児の母親であり、ハーバード大学の小児精神科医、脳神経科学者でもある内田舞さん初の育児書『小児精神科医で3児の母が伝える 子育てで悩んだ時に親が大切にしたいこと』(日経BP)から、「レジリエンス」を育むために、親ができることと守らなきゃいけないときを一部抜粋・再編集して紹介する。
「レジリエンス」を育む親の姿勢
失敗したり、挫折したり、困難に直面したりした時に、それを乗り越えて立ち直る力を「レジリエンス」といいます。「回復力」「再起力」「しなやかさ・弾力」と説明されることもあります。
レジリエンスは、子どもがこれから成長し、親もとを離れて自立していくうえで、欠かせない力です。自尊心は、そうしたレジリエンスの土台となります。
親が子どものためにレールを敷いて、失敗しそうなことをあらかじめ排除して守り続けることは、子どもが小さいうちの、特に身の安全に関わる場面では必要なこともありますが、大人になるまですべての状況でやっていくのは不可能です。そして、そうしなければならないわけでもないと思います。

子どもは自分で自分の道を選び、失敗や挫折を乗り越えて自立していきます。
最初のうちは、失敗や挫折を乗り越えるために、親の支えも必要でしょう。励ましたり、助言したり、休んで充電する様子を見守ったりしなくてはならないかもしれません。そうして少しずつ自分で立ち直る“練習”をさせるわけです。
ずっと手をつなぐわけにはいかない
親の手を振りほどいて走りだし、転んで膝をすりむいて痛い思いをして、泣きながら親のところに戻ってきた子どもを、「痛かったね」となぐさめて受け止め、子どもがまた「よし、もう1回1人で走ってみよう」と挑戦できるようになるのを待つようなイメージです(あくまでイメージなので、もちろん実際は、子どもが小さい時に手をつないで危険を防ぐことは必要です)。
「1人で行かせると転んでけがをするかもしれないから、これからもずっと手を離さずに親が守り続ける」というわけにはいきません。