守らなきゃいけないときもある

ただ、例えば子どもが学校で差別を受けていたり、いじめられていたりした場合は、親としては「何としてでも子どもを守る」という姿を見せてほしいです。

差別やいじめといった理不尽な仕打ちは、子どもの自尊心をひどく傷つけます。子どもの自尊心を守るためには、時には学校と対立したり、友達関係に介入したりすることも必要になるでしょう。

私は子どものころ、学校の先生に理不尽な対応をされることが続き、つらい思いをすることがありました。今で言えば、パワーハラスメントやいじめに近い対応だったと思います。

それを親に話したところ、母がその先生と話をしてくれました。そして「先生の話も聞いたけれど、あなたには非がないと思う。先生の方がおかしい」と、全面的に私の味方になってくれたのです。

子どもの自尊心を守るために守る姿勢を見せることも大事(画像:イメージ)
子どもの自尊心を守るために守る姿勢を見せることも大事(画像:イメージ)

その時の母は、私にはスーパーヒーローのように見えました。そして、そういう母の姿を見て、「私には、何があっても絶対に私のことを愛し続けてくれる味方がいるんだな」と感じました。

絶対的な味方がいると思えると、勇気が湧いてくるもので、それからもつらいことや大変なことはありましたが、「乗り越えよう」と前向きに頑張ることができるようになりました。また、「もし失敗しても、親の愛はどこにもいかないのだから大丈夫」と、失敗を恐れずに挑戦できたところがありました。

その後、親には反抗することもありましたし、大人になってからも、もちろんぶつかることはありますが、その時に私の味方になってくれたことは今でも感謝していますし、私の支えになっています。

愛していると伝えること、自尊心を育むことは、必ずしも実の両親がやらなければならないわけではないことも付け加えておきます。

学校の先生だったり、習い事のコーチだったり、祖父母や親戚のおじさんやおばさん、近所の人、友達の親などなど、子どもはさまざまな大人と関わりながら育っていきます。

その中で、「自分のことを真剣に思ってくれている人がいる」と思える体験ができれば、将来まで子どもを支える軸になるのではないかと思います。

『小児精神科医で3児の母が伝える 子育てで悩んだ時に親が大切にしたいこと』(日経BP)

内田舞
小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。

内田舞
内田舞

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3 児の母。2007 年北海道大学医学部卒、2011 年イェール大学精神科研修修了、2013 年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。