海や川で浮き輪を持っていたらどうか。役立ちそうに思えるが、遠山さんの考えはこうだ。
「浮き輪は遊び道具の1つであり、過信しないようにしましょう。波が高い場所ではひっくり返りやすく、空気が抜ける恐れもあります」
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浮き輪や浮き具は“あくまで”遊具
動物などの形をした浮き具(フロート)についても、強い風や水の流れがあると、あっという間に流されてしまうそう。

浮き具から水中に落ちると這い上がるのは難しいともいうので、持っていても過信はせず、浮き具から離れずに声を出したり、手を振ったりして救助を求めよう。
海や川での危険を避けるためには、対処法を学ぶことが重要だが、学校や公営プールなどでは難しいという。
ただし、講習を開いている地域や団体もあり、日本水難救済会も「海の安全教室」として、海に行く際に必要な備えを指導しているそう。「要請に応じ、全国どこでも柔軟に対応できるので相談してほしい」とのことだ。
遠山さんは「将来的には、全ての子供たちが必要な知識や技能を備え、海や川で楽しく遊べるように、指導者の人材育成や指導者間のネットワークの構築を図りたいです」と話す。
着衣での水泳などを体験できる機会も、今後は増えていくかもしれない。

遠山純司(とおやま・あつし)
海上保安大学校卒。水難事故の救助に長年あたり、内閣官房内閣参事官、海上保安庁総務部教育訓練管理官、第三管区海上保安本部(横浜)本部長などを歴任。2022年6月から現職。一級海技士(航海)、一級小型船舶操縦士。
取材・文=内山直弥