「ここはラッコの天敵でもある、シャチが嫌がります。スピードも出ず、体にコンブがまとわりつく。ラッコにとっては食べ物もある安全な場所なのです」
北極から流れてくる冷たい海流のカリフォルニア沖は、冷たい海で育つジャイアントケルプにとってもよい場所なのだという。
脇の下にポケットがある!?
さらなるトリビアは、「ラッコの脇の下に“ポケット”がある」ということ。
袋状ではなく、人間にあるような脇の下のくぼみとそのまわりのたるんだ皮膚を使って上手にものをはさんでいる。とった食べ物や貝を割るための石を入れたり、水族館ではおもちゃを入れていたりすることもあるという。
「猫の首を持って持ち上げても、皮膚に緩みがありますよね。それと同じで、ラッコも同じイタチ科の仲間をふくむネコ目で、皮膚にだぶつきがあるのです。噛みつかれても傷つかない、などいろいろな効果が考えられます」
さらに、今泉さんは「脇の下にウニを入れたりしているようですが、あのトゲトゲは痛くないようです。痛覚が鈍感なのかもしれません」と教えてくれた。
知る人ぞ知るラッコのトリビアを知ったら、もっと知りたくなるかもしれない。最後は、生態トリビア3つと、かわいさだけではない、ラッコを取り巻くシビアな現状について聞いた。

今泉忠明
1944年、東京都生まれ。哺乳類動物学者。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業。上野動物園の動物解説員、ねこの博物館館長、日本動物科学研究所所長などを歴任。『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)、『パンダ沼への招待状』(世界文化社)など、多くの書籍監修を手がける。