熊本・玉東町出身の俳優・柳明日菜さんが、熊本を舞台にした映画『レイニーブルー』を製作した。メガホンをとるのは今回が初めて。デビュー作に込めた思いに迫る。

当時高校生だった俳優・柳明日菜さん

2023年に人吉市で開催された『くまもと復興映画祭』。この日、上映された映画で主演を務めたのは、玉東町出身の俳優・柳明日菜さん。

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映画祭のディレクターを務める行定功監督は「柳さん、せっかくだから顔見せて。こういう顔で彼女があの役をするのはかなり難しい」と話す。

彼女が映画の世界に足を踏み入れるきっかけになったのは、この『復興映画祭』だった。柳さんは「(映画から)パワーをもらって。将来、何を目指したらいいのか見えていなかったので、言葉にはできない何かしらの答えをもらったのが、2021年の復興映画祭」と話す。

映画に引き込まれた少女が「作りたい」

そんな柳さんには、ある夢が生まれていた。「〈自分も映画作ってみたいな〉って地元の乗りで、仲間たちと小さくてもいいから、温かいものを作る」と話す。

熊本のイベントをきっかけに、映画に引き込まれた熊本出身の少女が、熊本で映画を作りたい。その思いに多くの人が賛同し、製作が始まった。

スタッフを前に「監督と脚本を務める柳明日菜です。いい作品が作れるように、たとえ失敗したとしても悔いが残らないように全力でやるので、皆さんもついてきてください」と挨拶した。

まずは出演者のオーディション、40人の出演者枠に約120人もの応募があった。役者経験がある人から全くの初心者まで。さまざまな人がそれぞれの思いを込めて映画への出演を目指し、アピールした。

そして、初顔合わせ、出演者たちと、役に対するイメージを話し合い、脚本の細かい部分や衣装などを決めていく。

出演者は「地元出身の子が監督で映画を撮るというのが、今までになかったことなので(応募した)。地元の高校の先生役なので、熊本弁をフルに使って、しっかり生徒を注意できるようにしたい」と話す。

柳さんも「今は準備段階だが、クランクインが待ちきれない。早く撮りたい」と話していた。

そして、待ちに待ったクランクイン。この日の撮影現場は、柳さんの母校でもある県立玉名高校。主演も務める柳さんは、監督としてはもちろん、自らの演技でも撮影を引っ張っていく。

柳さんは「自分の撮りたいイメージの画がちゃんと撮れているのと、私が分からないときはプロの撮影部の人や演出部の人が教えてくれるので、すごく自分でも勉強になって、すごく面白い時間で、アッという間だった」と話す。

初監督映画『レイニーブルー』が完成

そして、2025年に2年あまりの制作期間を経て、柳さんの監督デビュー作がついに完成した。

タイトルは『レイニーブルー』、柳さん演じる中山蒼は、笠智衆に憧れる女子高校生。進路や人間関係に思い悩む若者の姿を描くもの。

柳さんは「私が当時高校生で、学校に行けなかった時期があって、好きな映画をやりたかったが、周りは就職したり、進学したり、夢がある中で、私は好きなことをやるということにすごく葛藤を感じていた。そういった時の思いを思うがままに、表現した脚本なので、何かを変えてほしいとか、変わってほしいというよりかは、一緒に心を震わせてほしい」と話す。

『レイニーブルー』は、3月に開かれた『大阪アジアン映画祭』で世界初上映。その反響に、柳さんも手ごたえを感じたようだ。

柳さんは「『画の構図がとても美しく感銘を受けた』と書いてくださる評論家の人もいて、〈監督作デビューは地元の熊本で撮りたい〉というのがあったので、そういうところを魅力的に表現できたというのが自分でもうれしい。実際にこうして作り上げることができて、多くの皆さんに関わってもらい、たくさんの人に出会えて自分が変われた作品になった」と話す。

俳優として、そして、映画監督として。柳さんはこれからもフィルムを通して、自らの思いを表現していく。

(テレビ熊本)

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