食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「ポークライス」。
東京・早稲田にある軽食とラーメンの店「メルシー」を訪れる。具材はシンプルに豚肉と玉ねぎのみ、ご飯と絡めながらしっかり炒め香ばしく仕上げた一品を紹介。一時休業するも復活を遂げた、“ワセメシ”の歴史にも迫る。
学生の活気と静かな自然が残る街
「メルシー」があるのは、東京新宿区・早稲田駅。山手線の内側に位置し、JR新宿駅からは乗り換えを含めて約15分。早稲田大学を中心に発展した学生の街で、学生街の活気と静かな自然を楽しめる公園や神社が共存している。

早稲田大学のシンボル「大隈記念講堂」。時計塔は高さ38メートル、つまり「125尺」ある。これは、早稲田大学創立者の大隈重信が提唱した、『人生125歳説』にちなんでいるという。
そんな早稲田大学の周辺には、学生に人気のおいしくて安い飲食店が点在し、“ワセメシ”と呼ばれている。
歴代早大生に愛される店
目的の店は早稲田大学の南側に位置し、早稲田駅からは徒歩1分の場所。開店は1958年で、もともとは早稲田大学の南門付近にあったが1970年に現在の場所に移転した。

昔、倉庫だった店内は天井が高く広々とした空間。早稲田大学に関係するポスターや本が店を彩り、早大生との長い絆が垣間見える。
店を切り盛りするのは、2代目店主・小林一浩さんと妻の千夏さん、そして数人のスタッフ。スタッフの中には、現役の早大生もいる。

彼の両親とも早稲田大学出身だそうで、「本当はメルシーの息子が良かった。本当に温かい店、ここで働けて良かった」と話すほど、店内では和やかな掛け合いも行われていた。
ランチタイムは、行列ができるほどの人気ぶり。

早稲田大学出身の芸能人にもファンが多く、学生時代、タレントのタモリさんは五目そば、俳優の堺雅人さんはチャーハンをよく注文していたそう。
ほかにも、吉永小百合さんや元大阪府知事で弁護士の橋下徹さんなども来店していたという。
早大生の中でも「メルシー行ったことある人は多い。ラーメン好きな人は来ている」と定番の店だ。歴史ある早稲田のソウルフードとして世代を超えて愛され続けている。
父から受け継いだ味を60年以上守って
「メルシー」は、戦前やっていた喫茶店が前身。1958年に軽食&ラーメン店として生まれ変わった。