食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

今回植野さんが紹介するのは「オムレツ」。西高島平にある定食屋「かしを食堂」を訪れ、オイスターソースとひき肉のうまみを卵でふんわり包んだ、どこかほっとする懐かしい一品を紹介。

昭和の面影が残る店内で、2代目店主と妻が二人三脚で守り続ける魅力に迫る。

撮影でも使われる懐かしい定食屋

植野さんがやってきたのは、埼玉県も目と鼻の先の西高島平駅。団地の町として知られる高島平は、これまで、「あぺたいと」で焼きそば、「ふっとレスト」では「舌平目のムニエル」を学んだ。

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そして今回向かったのは、間もなく開店から60年という歴史を持つ「かしを食堂」。

店内はどこか懐かしい雰囲気が…
店内はどこか懐かしい雰囲気が…

趣のある店内は『釣りバカ日誌』や『相棒』など映画やドラマの撮影でも使われ、広い座敷席もあって近隣の人たちに重宝されている。厨房で腕を振るうのが、2代目店主の苅和賢司さん。そして、きめ細かくサポートするのが妻の果林さん。

住宅街の真ん中にポツンとある一軒家食堂、人情溢れるあたたかい店だ。 

月に1度は常連客が集まって飲み会

店内を見渡した植野さんは、「本当に懐かしいような、いい感じで年季が入った雰囲気。どれくらい経っていますか?」と店の歴史を尋ねる。

店主の苅和賢司さんと妻の果林さん
店主の苅和賢司さんと妻の果林さん

「ここでは42年目ですね。親父が脱サラしてはじめて、私が2歳の時からで、19歳の時にここに引っ越してきて」と賢司さん。さらに植野さんが果林さんについて聞くと、「結婚してからなのでびっくりしました。人生で自営業に入る予定がなく、飲食って想像も出来なかった」と笑った。

「かしを食堂」にのれんがかかっていない日曜日。本来は定休日でお休みだが、スタッフが「今日はパーティーなんですか?」と驚くほど店内に人が集まっていた。

この日は、いまや友人の仲にまでなった常連客が、食材を持ち寄り自由に楽しむ月に1度の飲み会だという。飲み会の最後はお待ちかね、果林さんが持ってきたのは手作りのチーズケーキ。

果林さん、やりたいことがあったそうで「パティシエの道に進みたかった。専門学校や費用など、タイミングが合わなくて。店で提供できた意味では夢が叶った」と感慨深げに話した。オムレツのように包み込む温かさが、かしを食堂の魅力だ。

本日のお目当て、かしを食堂の「オムレツ」。 

一口食べた植野さんは「懐かしい、そのまま食べてもケチャッを付けても美味しい」と絶賛する。

かしを食堂「オムレツ」のレシピを紹介する。