食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「豚肉と紅生姜天」。

東京・東陽町にある「居酒屋くろ兵衛」を訪れ、爽やかな辛みのある紅生姜に水菜とネギ、豚肉を合わせ、衣をつけフワっと揚げた一品を紹介。

常連から“おしどり夫婦”と呼ばれる2人が理想とする、下町酒場のあるべき姿にも迫る。

地元密着の店もある東陽町

「居酒屋くろ兵衛」があるのは、東京・江東区の東陽町駅。

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「東陽町は会社が多いところで、そんなに飲食のイメージはありませんが、以前『植野食堂』で来た総菜の店『柳精肉店』のような、地元密着の店もあって住むには良い街ですよね」と植野さん。

東京メトロ東西線が走る東陽町は、東京駅から約20分。

松坂大輔さんが少年時代にキャッチボールをしたという運河
松坂大輔さんが少年時代にキャッチボールをしたという運河

このあたりは、メジャーリーグでも活躍した松坂大輔さんの出身地としても知られ、町の南を流れる汐浜運河は松坂さんが少年時代、幅45メートルの運河を挟みキャッチボールをしたという伝説があるそう。

メニューは130種類!夫婦で営む居酒屋

東陽町駅から徒歩2分、1980年に開店した「居酒屋くろ兵衛」。夫の鈴木栄さんと妻の弥生さん、夫婦二人三脚で営む店。

木のぬくもりを感じる店内はカウンターにテーブル席、奥にはもともと座敷だった場所を改装したテーブル席もある。

壁一面に貼られたメニューは、居酒屋定番の品から店主オリジナルのメニューまで、約130種類。

常連客は「ジャーマンポテト頼みました。味がしつこくないから酒が進みます」「牛すじ煮、味の染みた大根が美味しい」「毎週土曜日に来ています、季節ごとのピザがおススメ」と話すように、何度でも訪れたくなる、地域密着型の店だ。

他にも、海鮮サラダと豆腐をすり鉢に盛り付けた「ジャンボ奴」や熱々の鉄板で提供される、ぴり辛のタレが食欲をそそる「ホルモン炒め」など、酒に合うおつまみがたくさんある。

旅行先でも試行錯誤で新メニュー誕生

そもそもなぜ、こんなにメニューが多いのか。

栄さんは「私の趣味です。料理作ることが趣味で、趣味の延長でやっています」と語る。さらに弥生さんも「旅行先で“これどうだろう?”と、アレンジしてもっと美味しくしようとしている」と説明する。 

鈴木さん夫婦は大の旅行好き。2010年頃から2人で日本各地をめぐり、2018年、ついに全ての都道府県を制覇した。しかも鈴木さんは旅行中も仕事のことを忘れず、各地で食べ歩くことで、新たなメニューを考案したそう。

栄さんは「旅行先で、“これなら俺でも作れるな”と思って…」と、旅行を経て生まれたメニューを教えてくれた。

宮古島のチヂミの「なべぱんぴん」。宮古島では他にも、さくさくふわふわで磯の香り広がる「もずくの天ぷら」とも出会った。

さらに秋田旅行では「秋田名物、“ポテサラがっこ”。秋田の居酒屋で美味しかった」と各地で出会った料理を説明してくれた。

本日のお目当ては、居酒屋くろ兵衛の「豚肉と紅生姜天」。 

一口食べた植野さんは「天ぷらなんだけどお好み焼きの雰囲気、酒のツマミにもなり楽しくしくて美味しい」と絶賛する。

居酒屋くろ兵衛「豚肉と紅生姜天」のレシピを紹介する。