わいせつ教員への厳格化を巡り、教員免許失効情報の検索期間をこれまでの3年から40年に延長することが発表された。しかしこれだけでは、わいせつ教員から子どもを守るのには十分でない。わいせつ教員を再び教壇に立たせない教育職員免許法(以下教員免許法)改正はいまどこまで進んでいるのか?取材した。

わいせつ教員の情報検索が40年可能へ

「教師が児童生徒へわいせつ行為を行うなど断じてあってはならない。現在文科省ではわいせつ行為を行った教師への厳正な対応について、教員免許状の管理の厳格化等の法改正を検討しているが、一方でこの問題は法改正以外でも実効性ある対応を講じる必要がある」

15日の閣議後会見で萩生田文科相はこう切り出し、新たな対応策を明らかにした。

萩生田文科相「法改正以外でも実効性ある対応が必要」
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その対応策が「教員処分歴の検索可能期間を現行の3年から40年に延長する」だ。

文科省では教員の採用権者に対して、官報に告知された教員免許の失効情報を検索できる「官報情報検索ツール」を提供している。

しかし検索可能な期間が直近3年間であることから、わいせつ教員が3年経って再び教壇に立とうとする際、検索が出来ないおそれがあることが問題視されていた。

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そこで今回、3年間を大幅に延長し40年間とすることにした。この見直しは、直近5年間の官報掲載情報については今年11月から、それ以前の情報は来年2月中には検索できるようになる予定だ。

懲戒の理由がわいせつ行為かどうか分からない

「これにより採用権者は、採用対象者が過去40年にわたり懲戒免職処分等を受けたかどうかを確認できるようになり、より慎重な採用選考が可能になる」(萩生田氏)

確かに検索期間が40年に延びることで、わいせつ教員の採用リスクは減るだろう。しかしこの対応策は、わいせつ教員の再犯への抑止力になるとはいい難い。

その理由の1つが、官報に公告されている情報だ。官報には、教員免許状の失効の事由、年月日などが公告されている。しかし失効の事由とは、例えば「教育職員免許法十条一項第二号該当」と記載されているだけで、わいせつ行為による懲戒処分だったかどうか明らかではない。

この問題について、教員免許法を担当する文科省の浅田和伸総合教育政策局長はこう語る。

「具体的にわいせつ行為と分からないのはその通りです。これはあくまでも官報に公告された情報を検索しやすくしているので、懲戒免職による失効まではわかりますが、その具体的な理由まではこの仕組みではわかりません。ただし失効情報はもれなく確認することが出来るので、採用に当たって判断する上では有効であるとは思っています」

浅田総合教育政策局長「具体的にわいせつ行為と分からないのはその通りです」

本人の自己申告任せで氏名を変えたらわからない

また、ほかにもこの対応策が不十分な理由がある。

中学時代に教員からの性暴力被害に遭い、今月9日文科省に政策提言を提出した石田郁子さんはこう語る。
「教員が氏名を変えて違う学校で再犯した事例も過去にあったことから、免許失効情報の検索期間の延長では実質的な防止にならないと思います」

石田さんは9月9日文科省で会見を開き、教員の性暴力に対する政策提言を行った

官報の情報ではわいせつ行為による懲戒免職かどうかわからないので、採用権者は採用対象者本人に事実確認する。しかしその内容はあくまで、自己申告に任せるしかない。本人が嘘をついたり、氏名を変えていると、それ以上確認する術がないのだ。

これに対して浅田氏は、「あくまでこれは、採用の1つの手がかりということになるかと思います」と説明する。

「親や子どもは教員を選べない。医者や弁護士とは違う」

こうして対応策への実効性がどこまであるのか不明な中、やはりわいせつ教員から子どもたちを守るための「本丸」は教員免許法の改正だ。

しかし萩生田文科相自らが改正の旗を振っているにもかかわらず、その進捗は芳しくない。

「検討状況は率直にいえば、まだご説明できるところまで熟していない。当然様々な検討をしているが、まだ具体的にこういう方向でといまの時点ではいえる状況ではない」(浅田氏)

萩生田氏自身は15日の会見で、改正が進まない理由の1つに内閣法制局の存在を指摘した。

「法改正にいまだ踏み切れない事情は、他の免許制度との整合性というか、横並びといいますか、こういったことが(内閣)法制局でも課題になっていると承知しています。たとえば弁護士や医者は過去にそういう失敗をしても、患者や依頼人がその人を選ぶか選べばないか接点を避けることはできます。しかし義務教育の教員の場合は、親や子どもたちは先生を選ぶことはできないわけです」

「わいせつ教員の再犯率が高いのはエビデンスがある」

さらに萩生田氏は「過ちを犯した人たちが更生出来る前提で日本の法制度はある」としたうえで、教員の場合は状況が違うと疑問を呈した。

「教員の免許資格は他の国家資格等の資格とは、やや性格が違うのではないかと思っています。わいせつ教員の再犯率が非常に高いというのが、現実にエビデンスとしてあります。教師ではなく児童相談所の職員として、同じような事件を起こすということも現実に起こっています。そういうことを考えると、厳格に臨んでいかないと子どもたちを守ることは出来ないのではないかと思います」

前述の石田さんもこう語る。

「教育委員会が教員の免許失効情報をみたいのは、処分歴のある教員の採用を歓迎していないか、採用してからの行動を警戒しているからだと思います。免許失効情報を長期間検索出来るようになることには賛成ですが、リスクのある教員は誰かを知ることよりも、リスクのある教員の就労機会を制限するような教員免許法の改正を進める方が効率的だと思います」

小児性愛はWHOなどで病気と定義され、治療が必要とされている。しかも小児わいせつの再犯率は10%で、前科2犯以上の再犯率は80%を超えている。こうしたエビデンスだけを見ても、わいせつ教員に再び免許を取らせない教員免許法の改正を文科省は最優先にすべきではないか。

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【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】