JRの列車内で女性のスカートの中に小型カメラを差し入れ、盗撮を繰り返していた男の裁判で、仙台地裁は9月20日「懲役1年、保護観察付きの執行猶予3年」有罪判決を言い渡した。
公共の場で女性を狙った卑劣な犯行。両親が見守る中で行われた裁判で、男の口から語られたのは生々しい犯行動機だった。

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5ミリのカメラをサンダルに…

迷惑行為防止条例違反の罪に問われたのは、仙台市宮城野区の無職の男(37)。
起訴状などによると、男は2023年6月19日の午前9時半ごろ、仙台市内を走るJR仙石線の車内で女性のスカートの下に小型カメラを差し入れて、女性の下着を撮影。わずか3日後の22日にも、午前7時40分ごろと午前8時15分ごろ、同じくJR仙石線の車内で、別の女性のスカートの下に小型カメラを差し入れ、大腿部やスカート内の下着などを撮影したとされている。

男が主に使用していたのは、直径5ミリほどの小型カメラ。つま先に穴を開けたサンダルにこのカメラを仕込み、自身の足を女性のスカートの下に差し込む形で、女性のスカートの中を撮影していたとみられている。

男が盗撮に使用したサンダル つま先部分近くに小さな穴があり そこに5ミリほどの小型カメラを仕込んでいた
男が盗撮に使用したサンダル つま先部分近くに小さな穴があり そこに5ミリほどの小型カメラを仕込んでいた

男のパソコンなどからは、女性の顔や後ろ姿スカートの中を撮影した約1000件もの動画が見つかっていた。警察の調べに対し男は黙秘を貫いていて、法廷で何を話すか注目が集まっていた。

「盗撮自体が性癖」生々しい動機

迎えた初公判の日。丸刈り頭にグレーの上着、黒色のジーンズ姿で黒縁眼鏡をかけて入廷した男。
裁判冒頭、男は検察官が起訴状を朗読している間、斜め前を向き微動だにせず話を聞いていた。仙台地裁の三貫納隼裁判官から起訴事実に間違いがあるか尋ねられると、男は一呼吸おいて「間違いありません」と起訴内容を認めた。

続く冒頭陳述で検察側が明らかにしたのは、男が過去にも同様に盗撮をしたとして、2013年と2016年にそれぞれ数十万円の罰金刑となっていた事実だった。

警察が男から押収したものの中には ボタン型のカメラも
警察が男から押収したものの中には ボタン型のカメラも

また、検察側が証拠として提出した供述調書によると、男は盗撮する理由について、「盗撮すること自体にスリルを感じ、そのスリルを感じたいと思うとともに性的な欲求を満たしたいから。盗撮した動画を見ながら自慰行為をすることで性的欲求を満たし、盗撮をすること自体に性癖があった」というような趣旨の話をしていたという。生々しい男の動機が明らかになった。

息子を信じ続けた母親

6日には、証人尋問と弁護側による被告人質問も行われた。証人として呼ばれたのは男の母親。裁判官から男の母親が呼ばれると、男は両親が座っていた傍聴席に目線が動いた。この日の裁判で男が動きを見せたのはこの時だけだった。

母親は証人尋問で検察官から、「以前にも盗撮事件を起こして処分されている。盗撮をする理由を聞いたことはあるか」と尋ねられると「『もう盗撮をしない』と(息子が)言っていたから、信じていた。理由は詳しくは聞いていなかった。信じていた」と「信じていた」という言葉を繰り返す。子を大事にする母親の悲痛な心情を強く感じた。

およそ20分間に及んだ母親の証人尋問中、男は微動だにすることなく母親の話を聞いていた。

また、弁護側の被告人質問で男は、時折傍聴席にも聞こえないような小さな声で受け答えを繰り返した。逮捕される前の盗撮の頻度などについて聞かれると「繰り返し行っていた。毎日ではなく、週に1~2度はやっていた」などと話した。

また、現行犯逮捕された6月22日については「電車の乗り降りを繰り返し、2~3時間になっていたかもしれない」と、本人の話からも常習性が伺えた。

男が盗撮を繰り返していたとみられるJR仙石線
男が盗撮を繰り返していたとみられるJR仙石線

一方、盗撮の回数については「その日によって違うので思い出せない」と話したほか、いつから盗撮をやっていたのかといったことについては、忘れたとして、あいまいな回答をする場面も多々あった。1時間の予定だった裁判だが、この日だけで結審せず、翌日に持ち越しとなった。

「撮影するスリルを求めていた」

翌7日には検察側と裁判官の被告人質問、そして論告求刑・弁論が行われた。
検察側の被告人質問では、携帯電話で女性の姿も撮影していたことについて問われると、5秒ほどの沈黙があった後、「あとでどういった撮影の状態だったか見返すため」と話し、続けてスカート内だけでは足りなかったのかと聞かれると、即座に「はい。その通りです」と答えた。

さらに過去の事件にも触れられ、再び盗撮に及んだ理由を問われると「逮捕された後はもうしないと思っていたが、気が緩んでしまった」と話した。

検察側の被告人質問では、男は今回起訴された3件以外にも、男が盗撮行為を行っていたこと、自身が観賞するための盗撮だったことが明らかにされた。

警察が公開した押収品
警察が公開した押収品

続く裁判官の被告人質問では、なぜ電車内で盗撮をしたのかを問われた。男は罰金刑となっていた過去二回の事件では、店舗の中での盗撮をしていたのだ。

男は質問に対し、「電車の方が込み合っていて、撮影の機会が多いと考えた」と、はっきりとした口調で話す。さらに裁判官から、プライドや羞恥心があって男が周囲に相談を出来ていなかったことを指摘されたうえで、「行為の恥ずかしさがわかっていても盗撮行為を続けたのはなぜか」と問われると「性的欲求と撮影をするというスリルを求めていたと思う」と、被害者の気持ちを全く顧みない、身勝手な犯行動機を述べた。

両親座る傍聴席に深く頭下げた男

論告求刑で検察側は、サンダルに穴を空けるなどして小型カメラを設置し、女性を物色して各犯行に及ぶなど計画性があり、スカート内だけでなく各被害者の容姿も撮影するなど卑劣な犯行だと指摘。さらに「自己の性的欲求を満たすのみならず、盗撮を行う際のスリルを味わいたいなどと考え、それぞれの犯行に及び、被害者のことを顧みない身勝手な動機に酌量の余地は全くない」などと厳しい指摘をしたうえで、懲役1年を求刑した。

一方弁護側は、男が容疑を素直に認めていることなどから、執行猶予付きの判決を求めた。

男は、最後に発言を求められると、声を震わせながら「二度とこのようなことを起こさないと誓います。被害者の方にお詫びを申し上げたいです。誠に申し訳ございませんでした」と謝罪し、両親などが座る傍聴席に深く頭を下げた。

与えられた 立ち直るチャンス

そして迎えた判決言い渡しの日。これまでの裁判と同様の出で立ちで法廷に姿を見せた男。男の両親もその行方を見守っている。そんな男に言い渡されたのは「懲役1年、保護観察付きの執行猶予3年」という判決。執行猶予付きではあるものの、有罪判決となった。

三貫納隼裁判官は「男は過去に2度同様の事件で罰金刑になっていたのに、立ち直りの材料にせず、自分の抱える問題点を改善する取り組みも出来なかった。盗撮行為が相手に与える被害の大きさについて十分に思いをいたすことが出来ず、自分自身の性欲などの欲求を満たすことを優先して犯行を繰り返したことは、厳しく非難されるべき」と指摘。

一方で、男が罪を認めて法廷で謝罪をしていること、証人として出廷した母親が、男と同居して更生に力を貸すと誓っていることなどを挙げ、「改めて社会の中で立ち直るチャンス与えることにした」とも述べ「性犯罪の一種という盗撮行為の性質を鑑みて、男の立ち直りには公的機関のサポートを受けることが適切」などとして、保護観察付きで執行猶予のついた判決の理由を説明した。

微動だにせずに裁判官の話を聞いていた男。最後に裁判官から「一回チャンスをもらったからといって、これを棒にふったらもう後はありません。そのことだけは十分把握しておいてください」と言われると「はい。かしこまりました」と淀みなく答え、男は深く頭を下げた。

列車内という公共の場で、女性を狙った卑劣な犯行を繰り返していた男に言い渡された判決。盗撮で男に処分が下されるのは今回で三回目で、もうこれ以上盗撮を繰り返すと、執行猶予付きでは済まされない。二度と同じ過ちを犯さないよう、社会全体のサポート、そして家族の徹底した監督による更生を願う。

(仙台放送)