「ぐっすりよく眠った」という“睡眠休養感”は、入眠がスムーズで途中覚醒がなく、深い睡眠が長く、そしてレム睡眠も安定してとれ、その人にとって十分な睡眠時間が確保されたときに感じられる。こういうときの睡眠経過図はお手本のような睡眠サイクルを示す。

ただ一方で、「ぐっすりよく眠った」というのは主観にすぎないことは理解しておいたほうがよい。「寝つきが悪くて」と悩んでいる人が、実際は20~30分で入眠していることはよくある。

「まったく眠れないんです」と切実に訴える人をポリソムノグラフィーで調べてみると、睡眠サイクルに大きな問題がないということも珍しくない。

主観的な睡眠評価と客観的に測定した睡眠の間には想像以上に大きな差がある。

本人はよく寝ていると思っていても実際は…(画像:イメージ)
本人はよく寝ていると思っていても実際は…(画像:イメージ)

また、実際の睡眠状態はメリハリがなく浅い睡眠が続いていて、決していい眠りとは言い難い睡眠でも、本人は「よく寝た!」と感じていることもある。

こうした、実際の眠りと本人の主観的な眠りとの乖離(かいり)が生じることを「睡眠誤認」という。不眠症を訴える人の中で、実際は睡眠誤認という人は意外と多い。

自覚的な不眠状態が強い人ほど、睡眠時間を過剰に短く申告する傾向があり、むしろ、睡眠にこだわりのない人のほうが、正確に睡眠時間を把握できていたりする。

「よい睡眠」にこだわり、「昨晩の睡眠はよくなかった」「何がいけなかったのか」といたずらに気にしたり、自身の眠りを過小評価したりして、実際の睡眠の質を悪化させてしまっているケースは少なくない。

心配や興奮で眠れないことは?

人の情動(感情)は「顕著性」と「感情価」の2つで表すことができる。顕著性というのは、はっきりした、強い感情かどうか。

感情価というのはポジティブな感情かネガティブな感情かを示す。

顕著性の高い情動は、感情価がどんなものであれ=ポジティブだろうとネガティブだろうと覚醒レベルは高まる。

「明日の会議でのプレゼン、失敗しないだろうか」そんな心配ごとを抱え、なかなか寝つけず、明け方まで悶々(もんもん)としてしまった。あるいは、ずっと楽しみにしていたイベントがいよいよ目前となり、興奮しすぎて眠れないといったことは誰しも経験したことがあるだろう。