24年前の2001年、福山市の住宅で主婦が殺害された事件で、殺人などの罪に問われている男の裁判員裁判が2025年1月30日から始まった。裁判の3日目である2月5日には、「被告人質問」があり、男は事件現場について「行ったことがない」と話し、改めて犯行を否認した。
「やった覚えがない。監禁されるのは理解できない」
この事件は2001年2月、福山市明王台の住宅で福山市西新涯町の無職・竹森幸三被告(70)が、当時35歳だった主婦を殺害したとして、殺人と住居侵入の罪に問われているものである。

2月5日、裁判3日目の被告人質問では、竹森被告は弁護人から事件当日現場に行ったことがあるか問われ、「ございません」と答えた上で、「やった覚えのない事件でこういうところに監禁されることが理解できません」と改めて犯行を否認した。
さらに、“事件当日のことを思い出した”として、「釣りが好きでメバルの釣り場を確認に行っていました」と述べた。
殺人の証明は?専門家の見解
改めて、これまでの裁判を振り返る。

まず、1月30日の初公判で、検察側は現場に残された血痕のDNA型が竹森被告のもの一致したと主張した。
一方で弁護側は「一部が竹森被告の型と一致していない」と主張していて、裁判の“争点”は「DNA型鑑定の結果で、犯人であるかどうかを証明できるか」である。

1月31日、裁判2日目の証人尋問では、DNA型鑑定の専門家が「現場に残った右足靴下の血痕は2人分のDNA型が混じっていて、9割は被告人の型だと考えられる」と証言した。さらに「時間経過によって劣化が進んでいる」と、考慮すべき点についても指摘している。

初公判を傍聴した広島大学大学院の吉中信人教授は「DNA型鑑定の科学的な正確さや実施方法の正確性といったものが、終始、審理に費やされましたが、問題はDNA型鑑定で実際に“その場にいた”ということになっても、これは殺人事件ですから、“現場にいたから殺人”というところまで一気に結びつくのかどうかと言うところです」と分析する。

2月5日の被告人質問では、弁護人から事件当日に現場に行ったか問われ、竹森被告は「ございません」と犯行を否認している。また、事件当日何をしていたかと聞かれると、「釣り場の確認に行っていました」とアリバイを示すような供述をした。
この被告人質問について吉中教授は「現場に行っていないと言われていますが、逆にもし、DNA型鑑定の結果などから“現場にいた”ということになったら、証言の信用性自体は少し減殺されます。だからといって、動機もよく分からない。殺人の証明にはなお遠いのではないか」と殺人を立証する難しさを指摘した。
この裁判は2月6日に求刑があり、2月12日に判決が言い渡される。
(テレビ新広島)